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なぜ民事信託が必要なのか

 

 

 

なぜ民事信託なのか

家族イラスト3

 

 

あなたは、あなたの財産を、

 

生前はどのように管理していきたいですか?

死後はどのように相続していきたいですか?

 

そのプランは、あなたが認知症になったとしても、実現できますか?

そのプランは、あなたの死後も、問題なく実現していきますか?

 

「遺言」や「成年後見制度」では、

あなたのプランが実現できない場合があることを知っていますか?

 

 

今までよく行われてきた財産管理の手法としては、

「遺言」と「成年後見制度」があげられます。

どちらも、民法に規定されている重要な「財産管理」の手法です。

 

しかし、「遺言」にも「成年後見制度」にも、

ともにデメリットがあることを知っていますか?

これらでは、あなたが求める財産管理のプランを実現できない場合もあるのです。

 

しかし、これらのデメリットをカバーしてくれるものもあります。

それが、「民事信託」です。

 

 

「投資信託」は「投資」という観点なのですが、

「民事信託」は、「財産管理」の一面だと思っていただけたらいいです。

 

 

では、まず、デメリットとは何かについて説明していきます。

 

遺言デメリッ1

 

「私の財産は長男に相続させる。

長男には子供がいないので、長男が死んだら、次男に相続させる。

次男が死んだら、次男の息子に相続させる」

という遺言は・・・書けません。

書きたくて書いたとしても、無効となってしまいます。

遺言は一代限りで、二次相続以降の指定はできないのです。

ですから、例えば、先祖伝来の土地があって、

ずっと〇〇家で相続させたいと思っていても、

長男に相続させて、その長男が死んだら、

子どもがいないので、その4分の3は長男の妻に相続されます。

そして、その妻が死んだ時は、どうなるのでしょうか?

妻には子供がいないので、次は、妻の兄弟姉妹に相続されてしまうことになります。

なんと、先祖伝来の土地は、妻の兄弟のものになってしまう可能性もあるのです。

 

 

成年後見デメリット1

 

財産が多い場合は、成年後見人は専門家(弁護士・司法書士等)がなります。

立派な息子さんがいて、息子さんが後見人になりたいと言っても、

裁判所は、赤の他人の専門家を選んでしまうのです。

そして、その財産は、裁判所の管理下におかれるようになります。

そして以後は、事実上、管理しかできなくなります。

本人の財産を減らすようなことは、できなくなるのです。

例えば、本人の意思で、毎年、せっせせっせとしていた110万円の贈与等の相続対策も、もうできなくなります。

例えば、収益物件を持っていて、手直しぐらいだったらいいのですが、「お客さんを入れるために大規模修繕したい」と言っても、裁判所は許可してくれません。なぜか?「それをやって100%賃借り入るんですか?確定してないでしょ。だからダメです。」と言われるのです。本人にリスクを負わせるようなことは絶対に認めてくれません。

例えそれが、以前からの本人の意思であろうとも、家族・孫・一族みんなのためになろうとも、できなくなるのです。

 

 

成年後見デメリット2

 

財産が多い場合、成年後見人には専門家(弁護士・司法書士等)がなります。

すると、毎月、専門家への報酬が発生してしまうんですよね。

裁判所は、専門家への報酬額を、財産の高で決めています。

専門家がどれだけ仕事をやっているかで決めているわけではないんですよね。

毎月報酬が発生して、非常にもったいないですよね。

 

 

成年後見デメリッ3

 

郵便とかも全部、後見人に来るようになります。

息子さんという人格的にも経済的にも立派な方がいても、親がたくさん財産を持っていたら、専門家がついてしまうのです。

専門家が横領する可能性は、ゼロとは言い切れないのが現状です。

 

【専門家成年後見人の不正の推移】     逮捕画像

 

2011年  6件(1億3万円)

2012年18件(3億1千万円)

2013年14件(9千万円)

2014年22件(5億6千万円)

2015年37件(1億1千万円)

電子版 日本経済新聞 平成28年4月14日掲載 

 

このように、「遺言」「成年後見制度」には、デメリットもあるのです。

そして、これらのデメリットをカバーしてくれるものに「民事信託」があります。

 

民事信託の基本的なしくみ

 

まずは、民事信託の基本的なしくみを説明します。

一般の人に説明する時は、登場人物を2人にしています。

 

登場人物2人

 

1人目が、年を取ったお父さん。認知症になる一歩手前です。

2人目が、それを心配している息子です。

 

お父さんが、じてす人です。

息子が、される人です。

 

法律上、このお父さんを「委託者」といいます。

法律上、この息子を「受託者」といいます。

 

委託者・受託者・受益者

 

もう一つ、法律上、「受益者」という人がいます。

恩恵を受ける人という意味です。

恩恵を受ける人は、最初は、お父さんでいいです。

最初は、「委託者」と「受益者」はイコールだと思って考えてください。

 

これが、信託の基本形です。

 

 

信託とは、

息子の裁量で、お父さんの財産を自由にできると思ってください。

それは、お父さんが認知症になってもです。

 

図で表すと、こんな感じです。

基本の流れ

 

「息子に信じて託します」と、財産名義を移転します。

財産の運用や管理は息子が行います。

家賃や利益、売却した時の代金など、利益は全て「受益者」であるお父さんに入ります。

 

例えば、お父さんが認知症になっても、息子が不動産やお金を預かっていたら、息子が不動産を売却したり、お金を借りて物件を建てたりすることができるということです。

息子の裁量でできるのです。

ちなみに、信託契約していなければ、お父さんが認知症になってしまうと、法律上、不動産を売却することも、お金を借りて物件を建てることも、何もできなくなってしまいます。

 

これが、信託の基本的なしくみだと思ってください。

民事信託の基本は、この二人です。

 

 

では、この信託財産を「柿の木」に置き換えて、考えてみましょう。

柿の木

 

 

お父さんが柿の木を持っています。

若いうちは、せっせせっせと育てることができました。

でも、高齢になると、お父さんはこう思うのではないでしょうか?

「木を育てるのは息子にまかせて、柿の実だけ毎年欲しいなぁ」と。

柿の木って、「柿の木そのもの」もあるけど、

「毎年柿の実がなる」ということも柿の木の大事なポイントですよね。

 

                                                       矢印2

   

そこで、信託を設定して、柿の木の所有権を2つに分離します。

「柿を収穫する権利」

「柿の木そのものの所有権から、柿を収穫する権利をぬいたもの」にわけます。

「柿を収穫する権利」をお父さんが持ちます。

「柿の木そのものの所有権から、柿を収穫する権利をぬいたもの」を息子が持ち、

せっせと管理するんです。

ちなみに、「柿を収穫する権利」のことを受益権といいます。

 

                                                       矢印2  

 

そして、信託を終わらせると、柿の木と収穫する権利がまた合体します。

 

                                                       矢印2

   

もとの柿の木に戻ります。

 

これを使っていろんな技を繰り広げるのが、信託だと思ってください。

例えば、柿の木を収益不動産に置き換えて考えてみてください。

すると、柿の実が毎月の家賃ということになりますね。

どんなものが信託できるの?

 

どんなものが信託財産になるのでしょうか?

原則として、財産価値のあるものであれば、なんでもOKなのです。

 

 

不動産所有権、借地権、動産(ペット含む)、金銭 

 

→預貯金債権は不可(つまり、銀行口座の事)

 

お金は信託できるけど、銀行口座は信託できないんですよね。

理論的にはできるのですが、名義を変えることは銀行がゆるさないんですよ。

銀行がまだついてきていません。

なので、銀行との交渉があとあと大事になってきます。

こういうことを、きっちりやってくれる弁護士や司法書士とつきあってください。

 

 

(上場株式)、非上場株式、著作権や知的財産権

 

→財産権以外の、議決権や利用決定権は受託者に移る。

 

株式も理論上は信託できるんですよ。

とくに、非上場株式は事業承継をからめてやると非常に有意義です。

非上場株式っていうと、普通のオーナーさん企業の株式ですよね。

ただし、上場株式は注意が必要です。

上場株式は証券実務がまだついてきていません。

つまり、息子に移転するっていうことを、証券会社や上場会社がゆるさないんですよ。

実務も地方によってそれぞれです。

 

 

債権(請求権)、将来債権(未実現の請求権)

 

→債権者に請求する権利が受託者に移る。

 

 

債務、連帯保証

 

→マイナス財産は信託できない!(別途、債権引受することは可能)

信託がスタートしたら

 

財産の名義が「受託者」に移ります。

 

【不動産】

普通の不動産売買だったら、「所有権移転」と登記されますが、

民事信託の場合は、「所有権移転及び信託」と登記されます。

受託者に所有権を移転させますが、完全には移転させないんですよっていうニュアンスだと思っていただけたら結構です。

 

 

【金融資金】

分別管理義務になります。

受託者は、自分の財布とわけて管理しなさいよってことです。

当然ですよね。委託者の為に使ってあげなければならないわけですから。

 

そこで、別の口座をつくります。

信託用口座(委託者「お父さん名前」受託者「息子名前」信託口)という口座をつくってくれるんです。

そこに信託財産を入金します。

 

しかし、信託をよくわかっていない金融機関もあり、このような口座をつくってくれないところもあります。

もし、信託口座がつくれなかったらどうするのか?

 

個人口座で別管理するしかないんですよね。

でも、息子の口座にお金が入ったら、税務署は絶対こう言ってくるでしょう。

「それ贈与じゃないの?」

なので、信託契約書が非常に大事になってきます。

口座がつくれなかったときのことも考えて契約書つくらないといけないんですね。

「口座がつくれなかったときは、息子名義の〇〇口座で管理する。」

この契約書を税務署に見せたら、なるほど贈与じゃないんだねとわかってくれます。

民事信託の典型的な事例

 

 事例1 収益物件を有効活用したいが、認知症になりそう

 

お父さんには、収益物件があって賃料があります。

でも、その土地は有効活用されておらず、いずれ有効利用したいと思っています。

しかし、お父さんは、最近物忘れが激しくなってきています。

賃貸者契約等の業務は、父を心配した息子が代わりに代筆している状況です。

 

矢印2昔のアパート

こういう時こそ、信託を組みましょう。

 

もし、お父さんが認知症になってしまうと、

判断能力(意思能力)がないとみなされ、

大規模修繕✕、売却✕、建替え✕、賃貸借契約✕、管理委託契約✕、

法律上、何もできなくなってしまいます。

 

賃貸者契約とか、本当は代筆とかはダメなんですけど、逆に、そのようにやっているところこそ、民事信託ってやりやすいんですよね。息子さんがしっかりしているから。

 

認知症になってしまう前に、父と息子で信託契約を結びます。

「大規模修繕も、売却も、建替えも、賃貸者契約も、管理委託契約も、

 息子の裁量でできる」と。

認知症対策としては、最高の方法だと思います。

 

 

 事例2 借入れして収益物件を建てたいが、認知症になりそう

 

お父さんは、町の中心部で、駐車場をしています。

一等地で駐車場って、もったいなかったりもします。

お父さんは、借入れして収益物件を建て、この土地を有効利用したいと思っていますが、最近物忘れが激しい状態です。

 

矢印2駐車場

ここでも民事信託が有効です。

 

  • ①信託契約します。

 息子さんが受託者として受けます。

 信託契約書には、こう書きます。

 「受託者は、信託の目的に照らして相当と認めるときは、

  借入れの上、信託不動産となる建物を建築することができる。」

          ↓

  • ②銀行から建築用の資金の融資を受けます。

          ↓

  • ③収益物件を新築します。

          ↓

  • ④そこから賃料を受益者(お父さん)が受け取れます。

 

私は、この方法を最初に聞いた時、全身から電撃が走ったのを覚えています。

今まで、認知症のために決済ができず、成年後見を選ぶしかない事例を、司法書士として何度も目の当たりにしてきました。

しかし、認知症になる前に信託契約しておいたら、ちゃんと借入れしたり、物件を売れたりできるんですよね。

お父さん自身が借入れして建てることもできるのですが、建てている間に認知症になってしまったら、お金が最終実行される時に、具合がわるいんですよね。

なので、信託を先にまいておいて、そのリスクに備えるというのがこのパターンです。

 

【この事例の効果】

 

1.お父さんが認知症でも、息子の裁量で不動産の管理・運営・処分が可能

 

2.息子の名義で借入れを起こすが、実質的にはお父さんの債務

ここが大事なところです。

お金を借りて銀行と調印するときは、「委託者父受託者息子」で実印を押します。

登記簿では債務者息子になってしまうんですが、息子さんの借金ではありません。

契約書見たら、実質はお父さんの借金ですよということになります。

 

3.息子名義で借入れしているが、実質的にはお父さんの債務なので、

お父さんの相続時において債務控除として取り扱う。(要所轄税務署確認)

例えば1億円の財産があって、こういうかたちの1億円の借金があったら、1億円から1億円をひいて相続税がかからないんですよ。

 

 

 事例3 先祖伝来の土地を、ずっと〇〇家で引き継ぎたい

 

父の子には、長男と次男がいます。

長男とその妻の間には子がいませんが、次男とその妻の間には子がいます。

父の土地は先祖伝来のもので、ずっと〇〇家で引き継いでいきたいと思っています。

 

矢印2

 

家系図

 

「私が死んだら、長男に相続させ、長男が死んだら孫(次男の子)に相続させる」

と遺言を書きたいのですが、法律上できません。

 

遺言は、1代限りで、2次相続の指定はできません。

ですから、長男に相続させると、長男が死んだ場合は、4分の3が長男の妻に相続されます。

そして、その妻が死んだ場合は、妻の兄弟姉妹に相続されてしまいます。

なんと、先祖伝来の土地が、妻の兄弟のものになってしまう可能性があるんですよ。

これは困りますよね。

 

では、どうするかというと、信託なんです。

信託なら、遺言ではできない2次相続や3次相続ができるんです。

 

①まず、お父さんを受益者にしておいて、

②お父さんが死んだら、長男を受益者にして、

③長男が死んだら、孫(次男の子)を受益者にするんですよね。

④そして、ここで信託を終了させるんです。

 

そうすると、「最終的に孫に所有権を持ってこさせる」という力わざができるのです。

これ、遺言だったらできません。信託だからできるんです。

なので、信託というのは、自分の子、孫、その孫と引き継いでいくことができる素晴らしいかたちのものだと思っていいと思います。

「この土地を先祖伝来ずっと渡していきたい」という人には、信託をおすすめします。

民事信託 よくある質問

 

 

委託者=お父さん、受託者=息子で信託をしました。

これって贈与税がかかるのでは?

 

結論からいうと、贈与税はかかりません。

なぜか?

実質的には、なんら財産を移転していないからです。

託す人(委託者)と、恩恵を受ける人(受益者)が一緒だからです。

自益信託 

 

では、贈与税がかかる場合は、どんな時でしょうか。

他益信託

委託者=お父さん、受託者=息子、受益者=お母さんのように、

託す人(委託者)と、恩恵を受ける人(受益者)が、別の人ならば、贈与税がかかってきます。

他人の利益になってしまいますからね。事実上、贈与してるってことになります。

受益者が持っている権利って、ある種、財産なんですよ。

 

 

 

受益者の人が死んだ場合はどうするの?

 

結論からいうと、財産なので相続させます。

厳密にいうと、相続ではないんですけど(一度、受益権を消滅させて発生させたり…)、ここでは深くつっこみません。一般の方は、相続で処理されると思っていていいです。

受益権は、相続の対象となって、いろんな人に渡すことが可能です。

 

受益権の相続

先ほどの「先祖伝来の土地を、ずっと〇〇家で引き継ぎたい」という事例3のように、

「お父さんが死んだらお母さんに、お母さんが死んだら孫に」と、受益権を相続していくことができます。孫で信託を終了させたい場合は、契約書に「信託が終了したときの財産は、その時の受益権者にする」としておくんです。