業務のご案内
家族信託(民事信託)
家族信託(民事信託)目次
家族信託とは
家族信託と事業承継
廣森司法書士事務所の家族信託(民事信託)が選ばれる理由
廣森司法書士事務所の家族信託(民事信託)が選ばれる理由
吹田市でいち早く家族信託(民事信託)に取り組んだ実績
代表司法書士の廣森自身が家族信託(民事信託)の設計から登記までを全て担当
最先端の実務を全国の仲間(家族信託専門士)と共有
家族信託を得意とする税理士と連携
廣森自身が、不動産営業出身、ファイナンシャルプランナー、
宅建講師でもある 開業17年の実績に基づく周辺知識や豊富な経験
特徴1 吹田市でいち早く家族信託(民事信託)に取り組んだ実績
平成26年に信託法と出会ってから、必死に専門書で学び、
初めて家族信託(民事信託)を組成したのは平成28年4月です。
早い人で平成26年ごろですから、もしかすると私は少し遅い方かも知れません。
信託法に出会った当時から、すぐにでも「家族信託(民事信託)を設計したい!」と強く思っていた反面、前例が無い状態だったので、専門書で学んだ知識だけで頭でっかちの状態が続きました。
つまり、「石橋を叩いても渡らない」状態です。(私の性格なのかも知れません・・・。)
しかしながら、ちょうど平成27年頃から家族信託(民事信託)の専門書も充実し始め(それでも足りなく、玉石混交でしたけど・・・)、平成28年4月に初めて家族信託(民事信託)を設計しました。
今思えば、「石橋を叩いても渡らない」状態が続いて正解だったと思います。
理由は、信託法の知識で頭でっかちになるくらい、知識を詰め込んだことが、結局今となって、とても役に立っているのです。(もしかすると、それでも足りないのかも知れません・・)
現在では、少し判断に迷う時があっても、
「信託法第〇〇条ではこの様に規定されているため、△△である!」
→「そして、その条文の趣旨(成り立ち・条文の裏に込められている意味)は△△である」
→「さらに、当時の立法担当者(信託法を作った人)の考えは△△である」
というように、自分自身、プロとして自分の考えや意見に責任を持てるようになりました。
ちなみに、当時の立法担当者が出版した「逐条解説 新しい信託法(東京地方裁判所判事 前法務省民事局参事官 寺本昌宏 著)」という信託法の解説書を持っている司法書士や弁護士がいれば、その人は早くから信託法を勉強していたと判断してもいいかもしれません。
なぜなら、その本は既に絶版で手に入らなく、信託法の権威である、新井先生、遠藤先生、道垣内先生ですらも、この本に書いていることを引用して家族信託(民事信託)に関する専門書や論文を書いております。
特徴2 代表の廣森自身が家族信託(民事信託)の設計から登記までを全て担当
これって、すごく大事なことであると私自身、強く思っております。
なぜなら、家族信託(民事信託)の設計から登記までを全てする仕事は、実務的に「すごく重たい業務」なのです。
それは決して作業量ではなく、
「100人の依頼者の方がいれば、100通りの信託契約」があるからなのです。
つまり、答えのない業務なので、
「全部自分の頭で考えて、ゼロから起こしていかなければならない」のです。
さらに、当然、信託法の知識、受益者等課税信託という税法の知識に詳しくないと到底、出来ない業務なのです。
今後、家族信託(民事信託)実務、判例実務、金融実務が十分に積み上がり、法務局、国税庁等の統一見解等が出そろい、家族信託(民事信託)専用ソフト等が開発されると、ある程度は、事務所内のスタッフに多少は任せられる時代が来ると思いまが、後10年はかかるのではないかと思います。
ちなみに、家族信託(民事信託)というキーワードでHPを検索すると、大手事務所より小規模から中規模の個人事務所が積極的に家族信託(民事信託)に取り組んでいることがわかると思います。
なぜなら、先ほどからお話ししているように、家族信託(民事信託)の業務はその事務所の代表クラスでしか手に負えないからです。
つまり、勤務している司法書士は、その勤務先の日々の仕事に追われ、家族信託(民事信託)を専門に研究する余裕がありません。
また、大手事務所で家族信託(民事信託)に詳しい勤務司法書士がいたとしても、そういう優秀なスタッフは殆ど退職して独立しております。
それだけ、家族信託(民事信託)に詳しいという事は、今の時代において、希少価値があるのです。
特徴3 最先端の実務を全国の仲間(家族専門士)と共有
家族信託(民事信託)実務、判例実務、金融実務がまだ十分ではなく、法務局、国税庁等の統一見解等が出ていないこの時期は、全国の仲間の最先端の情報が非常に役に立ちます。
初めて信託を設計する前後のころ、信託法の条文や制度趣旨等を武装して、金融機関と話し合いをしましたが、金融機関の担当者からは、やはり「前例が無く、本部がNOと言っているので今回はお引き取り下さい」と追い返されることが大半でした。
やはり、知識がどのように実務に直結し、信託法の実務上の限界を知ることは依頼者のためでもあります。
なぜなら、「信託法上可能であっても、実務上出来ない」となれば、依頼者の方の落胆が大きいからです。
つまり、「最初は出来る!」と言われて、後で「残念ながら、出来ませんでした・・・。」と言われることを想像すれば簡単にわかることだと思います。(皆さんも、似たような経験ってありますよね)
また、私は、家族信託普及協会、民事信託推進センター、新日本法規といった団体の研修に積極的に参加したり、家族信託(民事信託)に関する業界紙等を定期購読し、最新情報を常に仕入れております。
特徴4 家族信託を得意とする税理士と連携
家族信託(民事信託)は、税法と切っても切れない関係にあります。
しかしながら、世間でこれだけ多くの家族信託(民事信託)のニーズがありながら、ネットで検索しても税理士が家族信託(民事信託)に積極的に取り組んでいるというHPをあまりお目にかかりません。
理由は、「まだ信託実務が浸透していないから、まずは静観」という税理士がほとんどだからです。
中には、「家族信託(民事信託)は、民法の脱法行為ではないのか?」とビックリする発言をする税理士の先生もいらっしゃいます。(悲しいことですが、司法書士でもそのような発言をする方もいます。)
一方、税理士で家族信託(民事信託)を売りにしている税理士の先生がいましたら、「その先生は相当、家族信託(民事信託)について詳しい」と思って、ほぼ間違いないでしょう。
特徴5 廣森自身が、不動産営業出身、ファイナンシャルプランナー、
宅建講師でもある 開業20年の実績に基づく周辺知識や豊富な経験
実は、家族信託(民事信託)の業務にとって、「周辺知識がとても大事である」と思っている司法書士は案外多いものです。
その証拠として「当事務所は不動産会社、生命保険会社、FP(ファイナンシャルプランナー)、税理士、弁護士、不動産鑑定士等と言った他士業と連携しております!」と司法書士事務所のHPに書かれていると思います。
確かに、この点は非常に大事なことです。
当然、当事務所も他業界、他士業とうまく連携をとっております。
しかしながら、連携が出来ていると言っても、その連携している他業種・他士業の実務や知識を、多少知らないと、依頼者の方が「丸投げ状態」となってしまいかねないのです。
つまり、「連携先のコントロール(管理や監視)が効かなくなってしまう」という事です。
例えば、生命保険のセールマンのなかには、自分自身の成績のために余計な保険商品を販売する方もいらっしゃいます。
そして、不動産の売却に関しても、何の根拠もなしに、不動産の売却代金だけを下げることしか頭にない不動産営業マンも多く存在します。
なので、その様な保険のセールスマン、不動産営業マンとの連携は、依頼者の方にとって「百害あって一利なし」なのです。
実際に「生命保険を使っての相続対策でどのようなものがあるのか?」・「不動産会社がどのように不動産の売却活動しているのか?」ということを理解している司法書士は、そう多くは存在しません。
なぜなら、司法書士でありながら、その他の業界に身を置くという遠回りを好き好んでする人は当然少ないという事は、皆さんもご理解頂けると思います。
私は、司法書士合格後、5年間ほど不動産営業にたずさわり、不動産業界の良い面、悪い面の多くを見てきました。
そして、司法書士になってからFP(ファイナンシャルプランナー)の資格を取り、実務家FP養成塾に入塾し、生命保険に関して試験勉強の知識では得られないことの多くを学びました。
傍からみると、すごく遠回りです。
こんな遠回りをした司法書士は全国でも私くらいしかいないかも知れません・・・。
しかしながら、その時に経験したことや学んだことは、今となって本当に役に立っております。
特に、家族信託(民事信託)と不動産は切っても切れない関係にあり、自宅不動産が信託されて、その後どの様に売却されていくかは、本当に皆さんの知りたいところでもあると思っております。
ちなみに、私は今まで、不動産営業、FP、司法書士、宅建講師等といった業務を多くこなし、あるいは、仕事を転々?!として、周りや尊敬する先輩から「一つの事に打ち込め!」・「一つのことに専門特化しろ!」・「廣森は器用貧乏や!」と言われ続けました。
しかし、今までこなした業務や勉強は、自分自身一貫した思いで携わったのであり、今となっては「本当にこれで良かった」・「本当に依頼者の方々の役に立っている」と実感しております。
ちなみに、私の事を「器用貧乏!」と言った尊敬する先輩も、今となっては「廣森すごいな!」と認めてくれるようになりました。
「先輩を見返すことが出来た!」という優越感と「先輩から認めてもらえた!」といううれしさの今日この頃です。
認知症リスク備えていますか?
よくある事例
認知症になると困ること
認知症になり、意思能力がないと判断されると、
その財産はすべて、本人はもちろん、その家族であっても
動かすことはできなくなってしまいます。
預金もおろせなくなるし、
定期預金も解約できなくなるし、
不動産は改修することも人に貸すことも売ることもできなくなります。
財産はすべて凍結状態となってしまうのです…。
成年後見制度のデメリット
この状態になってしまった場合、解消するには、
「成年後見制度」を使うしかありません。
家庭裁判所に申立てをし、成年後見人を決めてもらい、
本人に代わって、成年後見人に財産を管理してもらうのです。
しかし、そこには、デメリットとなってしまうことも…。
デメリット1
成年後見人には、弁護士や司法書士が選ばれることも多く、
その場合には、毎月の報酬を、本人の財産から支払わなくてはいけません。
月額2万~6万円が相場といわれています。
生涯にわたり、この報酬は発生します。
一度始めると、この制度を途中でやめることはできません。
デメリット2
本人の財産は、裁判所の管理下におかれるようになります。
その後は、不必要に本人の財産を減らすことは認められなくなってしまいます。
例えば相続税対策等は、もともとの本人の意思であっても、
一切できなくなってしまうのです。
こんなことにならないために「家族信託」
「信頼できる家族に、自分の財産管理を託す」という契約
「家族信託」という方法があります。
自分の財産の所有権のうち、管理する権利だけを家族に託すのです。
これなら、認知症になっても、当初の希望通りに、家族が代わって動いてくれます。
家族に託すものなので、成年後見制度のような高額な報酬はかかりません。
相続税対策等も、ずっと続けていくことができます。
家族信託を活用した事例
注意!家族信託できるタイミング
家族信託も契約です。
認知症になって、判断能力がなくなってからでは、家族信託を結ぶこともできません。
無効となります。
その時は、もう、成年後見制度を利用するしか手はありません。
家族信託を結ぶなら、元気なうち(判断能力があるうち)が条件です。
早めの対策をおすすめします。
2025年には、65歳以上の5人に1人が、認知症を発症すると推計されています。
(厚生労働省データ)
家族信託(民事信託)の基本的なしくみ
まずは、家族信託(民事信託)の基本的なしくみを説明します。
一般の人に説明する時は、登場人物を2人にしています。
1人目が、年を取ったお父さん。認知症になる一歩手前です。
2人目が、それを心配している息子です。
お父さんが、信じて託す人です。
息子が、託される人です。
法律上、このお父さんを「委託者」といいます。
法律上、この息子を「受託者」といいます。
もう一つ、法律上、「受益者」という人がいます。
恩恵を受ける人という意味です。
恩恵を受ける人は、最初は、お父さんでいいです。
最初は、「委託者」と「受益者」はイコールだと思って考えてください。
これが、信託の基本形です。
信託とは、
息子の裁量で、お父さんの財産を自由にできると思ってください。
それは、お父さんが認知症になってもです。
図で表すと、こんな感じです。
「息子に信じて託します」と、財産名義を移転します。
財産の運用や管理は息子が行います。
家賃や利益、売却した時の代金など、利益は全て「受益者」であるお父さんに入ります。
例えば、お父さんが認知症になっても、息子が不動産やお金を預かっていたら、息子が不動産を売却したり、お金を借りて物件を建てたりすることができるということです。
息子の裁量でできるのです。
ちなみに、信託契約していなければ、お父さんが認知症になってしまうと、法律上、不動産を売却することも、お金を借りて物件を建てることも、何もできなくなってしまいます。
これが、信託の基本的なしくみだと思ってください。
家族信託(民事信託)の基本は、この二人です。
では、この信託財産を「柿の木」に置き換えて、考えてみましょう。
①
お父さんが柿の木を持っています。
若いうちは、せっせせっせと育てることができました。
でも、高齢になると、お父さんはこう思うのではないでしょうか?
「木を育てるのは息子にまかせて、柿の実だけ毎年欲しいなぁ」と。
柿の木って、「柿の木そのもの」もあるけど、
「毎年柿の実がなる」ということも柿の木の大事なポイントですよね。
②
そこで、信託を設定して、柿の木の所有権を2つに分離します。
「柿を収穫する権利」と
「柿の木そのものの所有権から、柿を収穫する権利をぬいたもの」にわけます。
「柿を収穫する権利」をお父さんが持ちます。
「柿の木そのものの所有権から、柿を収穫する権利をぬいたもの」を息子が持ち、
せっせと管理するんです。
ちなみに、「柿を収穫する権利」のことを受益権といいます。
③
そして、信託を終わらせると、柿の木と収穫する権利がまた合体します。
④
もとの柿の木に戻ります。
これを使っていろんな技を繰り広げるのが、信託だと思ってください。
例えば、柿の木を収益不動産に置き換えて考えてみてください。
すると、柿の実が毎月の家賃ということになりますね。
どんなものが信託できるの?
どんなものが信託財産になるのでしょうか?
原則として、財産価値のあるものであれば、なんでもOKなのです。
①不動産所有権、借地権、動産(ペット含む)、金銭
→預貯金債権は不可(つまり、銀行口座の事)
お金は信託できるけど、銀行口座は信託できないんですよね。
理論的にはできるのですが、名義を変えることは銀行がゆるさないんですよ。
銀行がまだついてきていません。
なので、銀行との交渉があとあと大事になってきます。
こういうことを、きっちりやってくれる弁護士や司法書士とつきあってください。
②(上場株式)、非上場株式、著作権や知的財産権
→財産権以外の、議決権や利用決定権は受託者に移る。
株式も理論上は信託できるんですよ。
とくに、非上場株式は事業承継をからめてやると非常に有意義です。
非上場株式っていうと、普通のオーナーさん企業の株式ですよね。
ただし、上場株式は注意が必要です。
上場株式は証券実務がまだついてきていません。
つまり、息子に移転するっていうことを、証券会社や上場会社がゆるさないんですよ。
実務も地方によってそれぞれです。
③債権(請求権)、将来債権(未実現の請求権)
→債権者に請求する権利が受託者に移る。
④債務、連帯保証
→マイナス財産は信託できない!(別途、債権引受することは可能)
信託がスタートしたら
財産の名義が「受託者」に移ります。
【不動産】
普通の不動産売買だったら、「所有権移転」と登記されますが、
家族信託(民事信託)の場合は、「所有権移転及び信託」と登記されます。
受託者に所有権を移転させますが、完全には移転させないんですよっていうニュアンスだと思っていただけたら結構です。
【金融資金】
分別管理義務になります。
受託者は、自分の財布とわけて管理しなさいよってことです。
当然ですよね。委託者の為に使ってあげなければならないわけですから。
そこで、別の口座をつくります。
信託用口座(委託者「お父さん名前」受託者「息子名前」信託口)という口座をつくってくれるんです。
そこに信託財産を入金します。
しかし、信託をよくわかっていない金融機関もあり、このような口座をつくってくれないところもあります。
もし、信託口座がつくれなかったらどうするのか?
個人口座で別管理するしかないんですよね。
でも、息子の口座にお金が入ったら、税務署は絶対こう言ってくるでしょう。
「それ贈与じゃないの?」
なので、信託契約書が非常に大事になってきます。
口座がつくれなかったときのことも考えて契約書つくらないといけないんですね。
「口座がつくれなかったときは、息子名義の〇〇口座で管理する。」
この契約書を税務署に見せたら、なるほど贈与じゃないんだねとわかってくれます。
家族信託(民事信託)の典型的な事例
事例1 収益物件を有効活用したいが、認知症になりそう
お父さんには、収益物件があって賃料があります。
でも、その土地は有効活用されておらず、いずれ有効利用したいと思っています。
しかし、お父さんは、最近物忘れが激しくなってきています。
賃貸者契約等の業務は、父を心配した息子が代わりに代筆している状況です。
こういう時こそ、信託を組みましょう。
もし、お父さんが認知症になってしまうと、
判断能力(意思能力)がないとみなされ、
大規模修繕✕、売却✕、建替え✕、賃貸借契約✕、管理委託契約✕、
法律上、何もできなくなってしまいます。
賃貸者契約とか、本当は代筆とかはダメなんですけど、逆に、そのようにやっているところこそ、家族信託(民事信託)ってやりやすいんですよね。息子さんがしっかりしているから。
認知症になってしまう前に、父と息子で信託契約を結びます。
「大規模修繕も、売却も、建替えも、賃貸者契約も、管理委託契約も、
息子の裁量でできる」と。
認知症対策としては、最高の方法だと思います。
事例2 借入れして収益物件を建てたいが、認知症になりそう
お父さんは、町の中心部で、駐車場をしています。
一等地で駐車場って、もったいなかったりもします。
お父さんは、借入れして収益物件を建て、この土地を有効利用したいと思っていますが、最近物忘れが激しい状態です。
ここでも家族信託(民事信託)が有効です。
- ①信託契約します。
息子さんが受託者として受けます。
信託契約書には、こう書きます。
「受託者は、信託の目的に照らして相当と認めるときは、
借入れの上、信託不動産となる建物を建築することができる。」
↓
- ②銀行から建築用の資金の融資を受けます。
↓
- ③収益物件を新築します。
↓
- ④そこから賃料を受益者(お父さん)が受け取れます。
私は、この方法を最初に聞いた時、全身から電撃が走ったのを覚えています。
今まで、認知症のために決済ができず、成年後見を選ぶしかない事例を、司法書士として何度も目の当たりにしてきました。
しかし、認知症になる前に信託契約しておいたら、ちゃんと借入れしたり、物件を売れたりできるんですよね。
お父さん自身が借入れして建てることもできるのですが、建てている間に認知症になってしまったら、お金が最終実行される時に、具合がわるいんですよね。
なので、信託を先にまいておいて、そのリスクに備えるというのがこのパターンです。
1.お父さんが認知症でも、息子の裁量で不動産の管理・運営・処分が可能
2.息子の名義で借入れを起こすが、実質的にはお父さんの債務
ここが大事なところです。
お金を借りて銀行と調印するときは、「委託者父受託者息子」で実印を押します。
登記簿では債務者息子になってしまうんですが、息子さんの借金ではありません。
契約書見たら、実質はお父さんの借金ですよということになります。
3.息子名義で借入れしているが、実質的にはお父さんの債務なので、
お父さんの相続時において債務控除として取り扱う。(要所轄税務署確認)
例えば1億円の財産があって、こういうかたちの1億円の借金があったら、1億円から1億円をひいて相続税はかからなくなります。
事例3 介護が必要になったら、自宅を施設入所費用にあてたい
高齢のお母さんが実家で一人暮らしをしています。
お母さんは、「元気なうちは、この実家に住み続け、
介護が必要になった時は、この実家を売却して施設の入所費用にあてたい」と考えています。
こういう場合も信託が有効です。
お母さんが元気なうちに、お母さんと息子さんで信託契約を結んでおきます。
すると、施設入所が必要になった時には、息子さんの判断で、速やかに自宅を売却し、
その売却代金を施設の入所費用にあてる事が出来ます。
もし、信託契約を結んでいなかったら…。
お母さんが認知症になってしまった場合等は、
成年後見制度を利用しないと売却できなくなります。
すると、以下のデメリットが生じてしまいます。
①自宅を売却するのに、半年くらいかかる
家庭裁判所への申立等、いろいろと手続きが必要となり、
必要な時にお金を準備したくてもできない状況となってしまいます。
②専門家に対する報酬が余計にかかる
弁護士や司法書士等の専門家が成年後見人に選ばれると、
その後毎月、一定の報酬を支払っていかなければならなくなります。
信託契約していたら、これらからも回避することができるのです。
事例4 先祖伝来の土地を、ずっと〇〇家で引き継ぎたい
父の子には、長男と次男がいます。
長男とその妻の間には子がいませんが、次男とその妻の間には子がいます。
父の土地は先祖伝来のもので、ずっと〇〇家で引き継いでいきたいと思っています。
「私が死んだら、長男に相続させ、長男が死んだら孫(次男の子)に相続させる」
と遺言を書きたいのですが、法律上できません。
遺言は、1代限りで、2次相続の指定はできません。
ですから、長男に相続させると、長男が死んだ場合は、4分の3が長男の妻に相続されます。
そして、その妻が死んだ場合は、妻の兄弟姉妹に相続されてしまいます。
これでは困るという方もいますよね。
では、どうするかというと、信託なんです。
信託なら、遺言ではできない2次相続や3次相続ができるんです。
①まず、お父さんを受益者にしておいて、
②お父さんが死んだら、長男を受益者にして、
③長男が死んだら、孫(次男の子)を受益者にするんですよね。
④そして、ここで信託を終了させるんです。
そうすると、「最終的に孫に所有権を持ってこさせる」という力わざができるのです。
これ、遺言だったらできません。信託だからできるんです。
「この土地を先祖伝来ずっと渡していきたい」という人には、信託をおすすめします。
家族信託(民事信託) よくある質問
Q
委託者=お父さん、受託者=息子で信託をしました。
これって贈与税がかかるのでは?
A
結論からいうと、贈与税はかかりません。
なぜか?
実質的には、なんら財産を移転していないからです。
託す人(委託者)と、恩恵を受ける人(受益者)が一緒だからです。
では、贈与税がかかる場合は、どんな時でしょうか。
委託者=お父さん、受託者=息子、受益者=お母さんのように、
託す人(委託者)と、恩恵を受ける人(受益者)が、別の人ならば、贈与税がかかってきます。
他人の利益になってしまいますからね。事実上、贈与してるってことになります。
受益者が持っている権利って、ある種、財産なんですよ。
Q
受益者の人が死んだ場合はどうするの?
A
結論からいうと、財産なので相続させます。
厳密にいうと、相続ではないんですけど(一度、受益権を消滅させて発生させたり…)、ここでは深くつっこみません。一般の方は、相続で処理されると思っていていいです。
受益権は、相続の対象となって、いろんな人に渡すことが可能です。
先ほどの「先祖伝来の土地を、ずっと〇〇家で引き継ぎたい」という事例4のように、
「お父さんが死んだらお母さんに、お母さんが死んだら孫に」と、受益権を相続していくことができます。孫で信託を終了させたい場合は、契約書に「信託が終了したときの財産は、その時の受益権者にする」としておくんです。
事業承継なぜうまくいかないのか
家族信託(民事信託)は、事業承継対策にも非常に有効です。
では、まず、事業承継でよくある問題にはどのようなものがあるか、整理してみましょう。
1.相続税の問題
株価対策をしないと、相当額の相続財産となり、相続税が高額になってしまう。
相当額の相続財産の割には、換金性がない。
2.経営権の問題
自社株を半分以上渡してしまうと、会社の実権を握れなくなってしまう…
例えば、オーナー社長であるお父さんが、今まで、全ての自社株を持っていたとします。
会社が赤字で株価が安い時期だし、長男はいずれ後継者になるからと、
今のうちに株を長男に引き継いでおき、
長男が6割、お父さんが4割の株を持つことに変更したとします。
すると…
会社のことを決めるには、自社株の半分以上の賛成が必要になりますよね。(会社の重大な方針を決めたり、役員を選んだりクビにしたり。)
ですから、株を半分以上もつ息子が、株主としていろんなことを決めれるようになってしまい、父と息子の立場が逆転してしまう可能性があるんです。
株を誰が持つかは、非常に大事なことになるんですよね。
3.遺留分の問題
経営権である自社株を後継者に贈与又は相続させたとしても、
他の兄弟姉妹から遺留分を主張されてしまう
⇒お金で解決できなかったら、自社株を兄弟姉妹で分け合うことになり、
結局、経営権が安定しなくなってしまう。
遺留分とは、相続人の期待する権利、相続人の最低限もらえる権利のことをいいます。
例えば、父、母、長男、次男がいるとします。
社長である父の財産は自社株だけだと思ってください。
父が亡くなり、会社の後継者である長男に全部相続したとしたら、母や次男が何ももらってなかったら、母や次男が期待する権利が裏切られることになってしまう。
いくらお父さんの意思でも、母や次男にも法律上最低限もらえる権利があるわけなんです。
自社株もらったって換金できなくても、遺留分減殺請求できるんです。
自社株を分け合うことになると、結局、経営権が安定できなくなってしまいますよね。
4.オーナー社長が認知症になった時の問題
オーナー社長が認知症になると、株主総会が開けない…
⇒何も決めることができず、会社がストップしてしまう。
株式会社の重要事項は、株主総会で決定されます。
(会社の重大な方針を決めたり、役員を選んだりクビにしたり。)
お父さん一人だけが株主の時は、お父さん一人の株主総会で決めれました。
でも、そのお父さんが認知症になってしまったら…。
株主総会は開けなくなってしまいます。
ということは、何も決めれなくなってしまいます。
全てがストップしてしまう。
株主総会を開けないのは会社にとって本当に致命時なことになるんですよね。
じゃ、株主総会を開いたことにしておけばいいじゃないか、株主総会議事録だけ作ればいいじゃないかって思う人もいると思うんですけど、それはダメなんです。株主総会議事録を不正に作成することは、刑法で罰せられることなんです。
(刑法157条 公正証書原本不実記載等)
事業承継の問題を家族信託(民事信託)で解決する
上記のような事業承継問題、これらをクリアするために、
家族信託(民事信託)をあてはめてみましょう。
信託は、自社株を2つの性質に分けることができます。(複層化といいます。)
自社株を、「受益権」と「それ以外」に分けることができます。
株主だと配当とかありますよね。
そういう配当とかを請求する権利。=配当請求権
それと、会社のことを決める権利。=議決権
この、金銭面である配当請求権と、会社のことを決める議決権
これらを分離させます。
これをわけると、非常におもしろいことなんですが、
配当請求権は、自社株の評価と一緒なんですけど、
会社のことを決める議決権は、税務上、評価0円なんですよね。
この性質をうまいこと扱いましょうっていうのが、信託をからませた事業承継対策になります。
下の事例で具体的に説明していきます。
家族信託(民事信託)を利用した事業承継の事例
事例1 認知症対策・議決権指図型信託
お父さんは、オーナー社長で、自分が認知症になった時のことを心配しています。
お父さんは、長男に後継者になってほしいと思っています。
長男に自社株式を持たせたいが、贈与税が心配です。
仮に自社株を贈与したとしても、まだまだ経営権はお父さんが握っておきたいと思っています。
では、これらの問題を、信託で解決してみましょう。
お父さんと長男で信託契約をして、自社株を長男に移します(信託化)。
そして、お父さんに指図権というものを与えるのです。
株式を信託すると、会社のことを決めるのは、受託者になります。
長男が株を預かってるから、長男が会社のことを決めるんですけど(議決権行使)、
「お父さんの指図通りにしなさいね」ってことを信託契約書に盛り込ませることができるんです。
お父さんは指図権を行使して、息子を手足のように使うんです。
なので、息子に株を託しているわけなんですけど、実質的には、お父さんが経営を握っているのと一緒になるのです。
「それなら、別に信託しなくてもいいのでは?」って思われるかもしれないんですけど、
いずれは息子には株を引き継がせたいと思っていますよね。
信託を組んで、毎年、暦年贈与していくことによって、受益権を渡していくことができるんですよ。
受益権を渡すのは、お父さんが元気なうちっていう制限はありますけど。
110万円までの贈与なら無税でできますよね。
なので、例えば1000万円の受益権があったとして、毎年100万円ずつ息子に受益権を渡していけば、
1年後はお父さんが900万円、息子が100万円の受益権、
2年後はお父さんが800万円、息子が200万円の受益権を持つ。
10年後には、息子に全ての受益権を渡せることになります。
そこで、信託を終了させれば、株を100%息子の所有にさせることができるのです。
ただし、暦年贈与の途中でお父さんが認知症になってしまったとしたら…。
暦年贈与も、もうできなくなります。
では、その時は、どうするか…。
株価によって、その後の対応を変えると良いでしょう。
株価が安い場合は。
その時点で、信託を終了させて株を全部息子に渡します。
認知症なら、お父さんの指図権も、もう行使できなくなりますしね。
半分の受益権が残っていたら、半分の贈与税で済みますよね。
株価が高い場合は。
財産が高かったら、贈与税も高くなりますよね。
その場合は、お父さんが亡くなってから株を相続するというやり方の方が、税金を安く済ませることができます。
そして、お父さんの指図権も認知症では行使できなくなるのですから、
「お父さんが認知症になったら、受託者の息子が100%議決権を行使する」と信託の条文に書いておくと大丈夫です。
事例2 認知症対策・遺留分対策型信託
お父さんはオーナー社長で自分が認知症になった時のことを心配しています。
お父さんは長男に後継者になってほしいと思っています。
長男はお父さんの会社で働いていて、次男は別の会社で働いている状態です。
長男に自社株式を持たせたいが、次男から遺留分を主張され経営が安定しないのではないかと心配しています。
ここでの信託は、
次男には、金銭的な配当請求権をいくらか渡して、
経営の根幹である議決権の行使は長男に集中させて、
経営の安定化を図るというのが、この遺留分対策型信託です。
まず、お父さんと長男で信託契約結びます。
株式を信託化します。
受益者はお父さんになっています。
お父さんが亡くなり、相続開始した時には、
受益権の50%を長男に、50%を次男にわけます。
ただ、株式を2つの性質にわけて、
配当請求する権利と議決権行使(会社の経営を決めていく権利)との2つにわけて、
お金で評価できるものに関しては、兄弟仲良く半分ずつ分け、
長男には、評価0円だけれども一番大事な会社の行く末を決める権利(議決権行使)を与えるんです。
そうすると、次男には、なにがしかの財産的評価が入っている形になってしまっているので、長男に対して遺留分減殺請求することができません。
事例3 株価対策型自己信託
お父さんは長男に後継者になってほしいと思っています。
今のうちに自社株を長男に渡しておきたいと思っています。
円滑な事業承継も大事だが、経営権はまだまだお父さんが握っておきたいと思っています。
長男が後継者不適格な場合は、次男に後継者になってほしいと思っています。
①まず、図のように、自分で自分に託します。
委託者と受託者がお父さんでイコールの状態、こんなことも法律でできるんです。
②自社株を移転させます。
お父さんが受託者として、資産管理をして、株式の議決権行使をして、と、経営の大事なことはお父さんが担います。
③そして受益者を長男にします。
今までの例は委託者=受益者でしたけど、ここではイコールではないんですよね。
なので、贈与税がかかってきます。
でも、今、株式が赤字なので、評価でないんです。贈与税がかからないんです。
贈与税がかからないタイミングで信託をするんです。
さらに、受益者指定権というのを、お父さんとか第三者に使ったりもします。
長男は、次期経営者になりますから受益者にしますけど、もし、経営者としての素質がないとわかったら、受益者を変えてしまえる権利っていうのを、お父さんや第三者に持たせることができるんですよね。
それによって、どんなメリットがあるかというと、
いつか受益者が誰かにすり替わられるかもと思ったら、真剣に仕事すると思いませんか?
仕事に真剣に取り組ませることができるのが、受益者指定権です。
株価が低い時点で、贈与税を回避しつつ、相続税の対策をし、議決権はまだまだお父さんに残して、長男の経営者としての素質をみていくということができる事例になります。