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商業登記
株式会社よりも合同会社の方が“お得”な理由
「会社をつくるなら株式会社」というイメージは、
いまだに根強いものがあります。
名刺に「代表取締役」と肩書が入るだけで、
どこか信頼感や格式を感じるという人も少なくないでしょう。
しかし、実際のところ、近年は
株式会社よりも
合同会社(LLC:Limited Liability Company)を選ぶ
メリットが非常に大きくなっています。
特に小規模事業者にとっては、合理的な選択肢であるといえます。
特に、ここ数年、
節税や社会保険料対策を目的とした“マイクロ法人”設立の場面では、
「合同会社」のほうが圧倒的に合理的な選択となっています。
1 設立コストの差は意外に大きい
まず注目すべきは「設立費用」の違いです。
株式会社を設立する場合、定款認証が必須であり、
公証人に支払う手数料が約5万円、
さらに登録免許税が最低15万円かかります。
一方、合同会社には定款認証が不要で、
登録免許税は6万円だけです。
よって、初期コストだけで
およそ約14万円近い差が生まれます。
2 意思決定がスピーディで柔軟
株式会社では、出資者(株主)と経営者(取締役)が分離しており、
株主保護の要請から、
会社の意思決定には手続に時間を要する株主総会や取締役会の承認が必要な場合があります。
これは会社法上の仕組みとしてそうなっており、
実際には少人数で運営している組織にとっては非常に手間がかかります。
これに対して、合同会社では
出資者=経営者(=「社員」。この「社員」は従業員という意味ではありません)という構造なので、
全員が経営の意思決定に直接参加できるため、
意思決定が非常にスピーディです。
たとえば、事業方針を変えたいといった場面でも、
即日対応が可能なので、
柔軟性においては
株式会社より合同会社が圧倒的に勝っているといえます。
3 利益配分の自由度が高い
株式会社では、原則として
出資(もっている株式数)比率に応じて利益配当が決まります。
つまり、出資額の多い株主がより多くの利益を得る仕組みです。
ところが合同会社では、出資割合に関係なく
利益配分を自由に設定できるという特徴があります。
たとえば、実質的に事業を引っ張っているメンバーに
多く配分することも可能です。
この仕組みは、
家族や友人同士など、信頼関係で構成される少人数の事業体にとって
非常に都合が良いといえます。
なので、合同会社は株式会社と違って、
メンバーの実質的な貢献度に応じた柔軟な運営が可能なのです。
4 対外的な信用は「中身」で決まる時代に
かつては、「株式会社でないと信用されない」という時代がありました。
しかし、現在ではその風潮は大きく変わっています。
Google合同会社、Apple Japan合同会社など、
世界的企業の日本法人でも
合同会社を採用している例が増えています。
取引先においても
「合同会社だから信用できない」といった評価は
ほぼ聞かれません。
結局のところ、信用は会社の形態ではなく、
「中身(会社の財務体質)」や「経営者の力量や人間性」
で決まる時代であるといえます。
5 デメリットも理解したうえで選ぶ
(1)利益配分を巡りトラブルになることがある
上記のメリットの裏返しになりますが、
株主を平等に扱う株式会社と異なり、
利益を自由に配分できる合同会社では、
その配分を巡り社員同士の意見が割れた場合にトラブルに発展する恐れがあります。
(2)株式公開や大規模な資金調達には不向き
合同会社は株式会社と違って、
株式公開、つまり上場会社になることは法律上出来ません。
また、大規模な資金調達には不向きです。
ただし、これらは
小規模の事業者、節税目的のためのマイクロ法人は、
その性質上、株式公開や大規模な資金調達なんてことは全く想定していないことから、
このデメリットは全く無関係であるといえるでしょう。