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家族信託における登記手続書類作成の苦労ばなし。その2

前回の続き・・・。

 

 

 

前回のおさらいをお話しすると

以下のとおりです。

 

 

 

1.今回の事例の登場人物と時系列など

 

 

 

まず、登場人物は、

①辞任した旧受託者 B

②新受託者 一般社団法人甲 代表理事B

(Bと代表理事Bは同一人物)

③信託不動産売買契約の買主C(不動産会社)

以上3名です。

 

 

 

次に、時系列は、

①家族信託として受託者Bが就任

 ↓

②受託者B辞任。同時に、一般社団法人甲(代表理事B)が新任

(Bと代表理事Bは同一人物)

③辞任した旧受託者Bが権限がないのにCと不動産売買契約

④登記の依頼

 

 

 

以上で気になる点は

権限のない旧受託者BがCとで信託不動産の

売買契約をしている点です。

 

 

 

つまり、

この家族信託における事例において

Cと信託不動産の売買契約をする権限は

一般社団法人甲にあります。

 

 

 

そして、

旧受託者Bは既に受託者ではないから

Cと信託不動産の売買契約する権限がありません。

 

 

 

なのに、

権限のない旧受託者BとCが

売買契約を締結しているのです。

 

 

 

普通に考えたら、

無効の不動産売買契約です。

 

 

 

2.書面上無効な契約をどのように有効にするのか?

 

 

 

ここで、注意してほしいのは、

関係当事者のお話を聞くと、

手続面に関して、順番を間違えただけで

特に違法・脱法なことをするという意図は

全くないということです。

 

 

 

それは、

私が関係当事者と面談し

確信を得ています。

 

 

 

なので、

登記手続を通すために、

どのような確認をして

その確認したことに対して

「どの様な書類を作成して署名捺印をもらうか」

ということにつきます。

 

 

 

そこで、

信託法を調べてみましたが、今回の事例で

信託法にヒットする条文はありませんでした。

 

 

 

すると、どうなるのか?

 

 

 

これは、もう大原則である

民法をベースに考えることになります。

 

 

 

そこで、

ヒットしそうな条文をあげると

以下の二つの条文です。

 

 

 

それは、

①民法第119条 無効な行為の追認

②民法第116条 無権代理行為の追認

です。

 

 

 

では、詳細を述べていきます。

 

 

 

3.民法第119条 無効な行為の追認

 

 

 

【民法第119条】無効な行為の追認 

無効な行為は、追認によっても、その効力は生じない。

ただし、当事者がその行為の無効であることを知って追認したときは、新たな行為をしたものとみなす

 

 

 

簡単にいうと、

無効な契約でも当事者が

「無効やけどこのまま契約にしておこう」

というようなことです。

 

 

 

なので、

今回の事例では

「新受託者である一般社団法人甲と

 買主Cの追認があれば大丈夫」

ということになりそうです。

 

 

 

但し、条文上、

「当事者」

なっています。

 

 

 

今回の無効な契約をした「当事者」

権限のない辞任した旧受託者BとCです。

 

 

 

つまり、

「当事者」は旧受託者BとCとなるので、

旧受託者Bの追認を得るということになります。

 

 

 

しかし、

新受託者である一般社団法人甲からの追認ならいざ知らず、

既に契約権限のない旧受託者Bの追認を得たとしても

なんら意味が無いということになりそうです。

 

 

 

もっとも、

この条文の趣旨からすると反社的行為でない限り、

当事者が望む以上、当該行為に

何らかの法律効果を認めてよい点にあります。

 

 

 

なので、今回において

「新受託者一般社団法人甲とCとを

 「当事者」として扱ってもいいのではないか!?」

と思えます。

 

 

 

ただ、

この条文を適用すると「当事者」の追認ですから、

Cの追認も取らないといけません。

 

 

 

ちなみに、

Cはそこそこでかい会社なので、

追認を証する書面等を発行するとなると

ひと手間も二手間もかかります。

 

 

 

よって、どちらかと言えば、

この条文は使いたくありません。

 

 

 

3.民法第116条 無権代理行為の追認

 

 

 

【民法第116条】 無権代理行為の追認 

追認は、別段の意思表示がないときは、契約の時にさかのぼってその効力を生ずる。

ただし、第三者の権利を害することはできない。

 

 

 

簡単に言うと、

代理権がない人がした契約を

本人が「いいよ(追認)」と言うことによって、

契約を有効にするということです。

 

 

 

これも行けそうかな~と思うのですが、

この条文が想定している当事者は

本人無権代理人と契約の相手方です。

 

 

 

そして、

今回の家族信託の事例を見ると当事者は

辞任した旧受託者B

新受託者の一般社団法人

相手方である不動産会社となります。

 

 

 

そこで、

条文の文字をそのまま当てはめてみると

本人≠新受託者だし、

無権代理人≠旧受託者なので、

この条文を直接に適用することはできません。

 

 

 

では、どうするのか?

 

 

 

さて、

この条文における追認とは、

「本人が無権代理人がした契約の効果を引き受けること」

にあります。

 

 

 

つまり、

「無権代理人の行為について

 代理権があったのと同じように扱う」という

本人の意思表示なのです。

 

 

 

そして、

民法がなぜこの様なことを認めているかというと、

これにより、本人と相手方に効果を帰属させることは、

本人の意思にも、相手方の意思にもかなうからです。

 

 

 

以上をもとに、

今回の事例に当てはめてみます。

 

 

 

今回の事例では、

新受託者に財産を処分する権限」

があります。

 

 

 

民法116条の条文では、

本人に財産を処分する権限」

があります。

 

 

 

そして、

「辞任した旧受託者は権限のない人」

です。

 

 

 

民法116条の

無権代理人は権限のない人」

です。

 

 

 

となると、

新受託者=本人、

辞任した旧受託者=無権代理人

というような式が成り立ちそうです。

 

 

 

さらに、

最判昭和37年8月10日では、

無権利者が他人の権利を自己に帰属するものとして処分し、

後に権利者(所有者=処分できる人)追認した場合は、

116条の類推適用により、

処分の時にさかのぼって効力を生じるとありました。

 

 

 

つまり、

この判例を引用しても

無権利者=辞任した旧受託者、

権利者=新受託者という式が成り立ちそうです。

 

 

 

よって、

今回の事例では

「民法116条の類推適用でバッチシ」

だと思いました。

 

 

 

そして、

民法第119条では当事者の追認とあって、

二人の追認が必要になりますが、

民法第116条類推適用だと新受託者である

一般社団法人甲だけの追認で大丈夫そうです。

 

 

 

つまり、

Cというそこそこ大きい規模の会社からの

追認を生する書面を取得するのは不要になり、

手間が省かれます。

 

 

 

4.某法務局に照会

 

 

 

以上、たらたらと述べてきたことを書面にまとめて、

某法務局に照会をかけました。

 

 

 

すると、

「先生の解釈で大丈夫です!」

とのこと。

 

 

 

これで、晴れて決済を迎えることができました。

 

 

 

5.私の言いたいこと

 

 

 

これについては、

またさらに長くなるので、

続きは次回・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これは知っておいて欲しい記事です。是非お読みください。