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なるほど法律コラム
ありがたいお節介、いらぬお節介?!お節介するなら真剣に?!
皆さん、こんにちは。
さて、今回のお題について以下のような具体例をあげますので、
皆さんも少し考えてみて下さい。
1 具体例 その1
あなたは、車の往来が激しい路上で、
今にも車に惹かれそうな飼主不明の小犬を発見しました。
そこで、「子犬が車に惹かれたりすると危ない」と思ったあなたは、
その飼主のために取り敢えず、あなた自身の家で、
その小犬の世話を開始しました。
そしてあなたは、「安全確保さえすればいいだけ」と思い、
数日間、小犬には水だけ与えて餌は与えず、
小犬が栄養失調になったところで、その小犬の飼主が現れ、
その小犬は動物病院にかかる羽目になってしまい、
病院代がかかってしまいました。
あなたは、何か責任を負わないといけないのでしょうか?
2 事務管理とは(簡単に言うと、「お節介」のこと)
民法第697条「事務管理」
「義務なく」「他人のために」「事務の管理を始めた者」は、
その事務の性質に従い、「最も本人の利益に適合する方法」によって、
その事務の「管理(以下「事務管理」という。)をしなければならない。」
上記条文の文言に当てはめてみると、
あなたは「義務なく」飼主である「他人のために」小犬を保護して
「管理を始めた者」(つまり、「お節介」を始めた者)なので、
飼主である本人が一番望む方法(「最も本人の利益に適合する方法」)で、
小犬を「管理」しなければならないことになります。
つまり、「法律上の義務も無いのに、つまり、「お節介」で、
いったん他人の小犬を預かったからには、
その飼主と同じように可愛がってあげなさい」ということになり、
少し難しい専門用語で言うと
「善良なる管理者の注意義務」をもって、
その小犬を管理しなさいということになります。
なので、「上記具体例 その1」において、
あなたは善良なる管理者の注意義務を怠ったので、
小犬の動物病院代を負担しなければいけません。
余談ですが、
この場合、知らぬ顔して立ち去った方が、
結果的に何もトラブルに巻き込まれ無かったことになります。
3 具体例 その2
台風が来て、
旅行でお留守のお隣さん家の倒壊した垣根を、
あなたは業者に頼んで修理してあげました。
旅行から帰ってきたお隣さんは
「大変助かりました」と言ってあなたに感謝しました。
あなたは、業者に支払った修理費を
お隣さんに請求できるのでしょうか?
4 管理者による費用の償還請求等 その1
民法第702条 第1項
「管理者」は、「本人のため」「有益な費用を支出」したときは、
本人に対し、その償還を「請求」することができる。
上記条文に当てはめると、
「管理者」であるあなたは、
お隣さんである「本人のため」、
生垣修理という「有益な費用を支出」したので、
その費用を「請求」できることになります。
5 具体例 その3
台風が来て、
旅行でお留守のお隣さん家の倒壊した垣根を、
あなたは業者に頼んで修理してあげました。
しかし、お隣さんは
生垣を潰してブロック塀にする予定がありました。
そして、翌週また別の台風が来たため、
直した生垣がまた倒壊しました。
あなたは、業者に支払った修理費を
お隣さんに請求できるのでしょうか?
6 管理者による費用の償還請求等 その2
民法第702条 第3項
管理者が「本人の意思に反して」事務管理をしたときは、
本人が「現に利益を受けている限度においてのみ」、
前二項の規定を適用する。
ここで、問題点としては、
①お隣さんは生垣を潰すつもりであったし、
②せっかく直した生垣がまたすぐに倒壊してしまった、
という2点です。
つまり、①ということは
あなたが生垣を直したことは
お隣さんである「本人の意思に反して」したことになります。
そして、②ということは、
お隣さんである「本人は現に利益を得ていない」ということになります。
とすれば、事務管理の償還請求等の規定が適用されないので、
あなたは業者に負担した修理費用を
お隣さんに請求できないことになります。
7 総括
表題にもあるとおり、
「お節介をするには中途半端にするのではなく、
真剣に、そして、ちゃんと空気を読め」
ということになります。
ちなみに、私が事務管理を習った当時、
『大阪のおばちゃんのお節介は、
大阪人には普通のことだけど、
東京人には「東京人の意思に反している(ウザイと思っている)」
のではないか』
と思いました(笑)。