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不動産取引
前回の続き。(不動産売買における説明義務について、もの凄い判例を見つけました!)
毎度です
不動産営業出身 大阪・吹田市の
FP(ファイナンシャルプランナー)兼
司法書士 廣森良平です。
昨日の、もの凄い判例の続きです。
契約時に東京のある区の建築に関する指導要綱を売主及び売主仲介会社が買主に説明を怠ってしまった事例です。
ここで、仲介会社が説明義務違反をしたのだから、仲介会社だけに責任があると思いきや、不動産の素人である売主個人にも責任ありと判断されました。
裁判の時に、売主は不動産売買については素人であるから、説明義務はない旨を主張したのですが、売主個人は仲介会社に売買契約の成約に向けて委任している以上、仲介会社は売主個人の履行補助者であるから、仲介会社の責任は売主個人も負う事となると判示いています。
ところで、売主は家をきちんと買主に引き渡す義務のある債務者であり、買主は売主から家をきちんと引き渡してもらう権利のある債権者であり、仲介会社が債務者の履行補助者という事になります。
そして、履行補助者とは、債務者が債務の履行のために使用する者であり、債務者の手足となって動く者を言います。
さて、債務者である売主には故意・過失がなくても、履行補助者である仲介会社に故意・過失がある場合は、これを債務者の帰責事由と評価する事が出来るのであろうかという事が問題になります。
そこで、法律の解釈は次のようになります。
「債務者は履行補助者を使う事によって活動領域を広げ利益を得ているから、履行補助者の行為によって生じるリスクについては、これを債務者が負担するのが信義則上公平である。
したがって、債務者の帰責事由とは、債務者自身の故意・過失及び信義則上これと同視しうべき事由を 含むと広く解すべきであり、履行補助者の故意・過失も信義則上債務者自身の故意・過失と同視出来るので、特段の事情の無い限り、その場合にも債務者は債務 不履行責任を負うと考えるのが相当である」
しかし、ここで問題となるのは債務者である売主と履行補助者である仲介会社の過失の程度が問題になります。
不動産の素人の売主より不動産のプロである仲介会社の方に、高度な注意義務を負うのは当然であり、通説も債務者が責任を負うべき履行補助者の過失の程度は、債務者自身における過失と同程度であるとされています。
となると、売主の軽い過失の程度と仲介会社の重い過失の程度とバランスが取れなくなってしまい、こうなると仲介会社の過失の程度が素人の売主自身の過失の程度に縮小してしまう事になります。
疑義のある判例と思いますが、下級審で判断されている以上、不動産取引の実務の指針には間違いありません。
色々な方面のプロに見てもらいたい判例ですね。
以上
不動産法務・不動産実務・不動産登記に特化した、
不動産業界出身司法書士兼
ファイナンシャルプランナーの廣森でした。