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相続・遺言
法務局に遺言書を保管してもらえるの?~「遺言書保管制度」~
本日は、
今年の7月10日からはじまる、
法務局が遺言書を預かってもらえる制度(「遺言書保管制度」)
について、お話します
1 なぜ、法務局に遺言書を保管してもらえるようになったのか?
さて、
遺言の方式の一つに
自筆証書遺言があります。
自筆証書遺言は専門家に払うお金も不要で、
自宅で手軽に書けるというメリットがあります
しかし、
ほんの些細なことで無効になったり、
遺言書を書きかえられたり、
なくしたり、誰かに隠されたり、
といった危険があります。
さらに、
遺言者が丹精込めて自筆証書遺言を書いたのに
相続人がその存在を知らず、
相続人同士が分け前の話をしてトラブルになる
デメリットもあります
そこで、
自筆証書遺言の手軽さを維持しながら、
デメリットが発生するリスクを回避するために
「遺言書保管制度」が実施されることになりました。
2 遺言書を保管してもらえる法務局はどこの法務局なのか?
保管してもらえる法務局は
遺言者のお住まいの住所もしくは本籍地または
遺言者の所有する不動産の所在地を管轄する
「法務局の本局または支局」
となっております。
ここで、注意していただきたいのは、
あくまでも「法務局の本局または支局」となっているので、
大阪法務局 〇〇出張所ではダメだということです。
なので、
自宅の最寄の法務局の本局または支局になります。
例えば、大阪市内の人であれば、
本局(最寄駅 地下鉄天満橋)に行って下さい。
ちなみに、
私の地元、吹田市の人であれば、
茨木市にある北大阪支局(最寄駅 阪急茨木市駅)に行って下さい。
3 預かってもらえる遺言の形式は?
当然、自筆証書遺言だけとなります。
また、
遺言の様式(紙の大きさ等)については、
以下のように定められています。
「法務省令でさだめる様式に従って作成した
無封の遺言書でなければならない」
と定められています。
なので、私は、
具体的にどんなものかということを
大阪法務局に問い合わせしてみました
そこで、得た私の結論は
「A4サイズ位のコピー用紙に書け」
ということです。
私が法務局に問い合わせをしてみたところ、
担当者は「やぶれにくく、丈夫な紙でお願いしたい」
とのことでした。
さらに、
遺言書のスキャンもするので、
あまりに大きい紙はご遠慮願いたいとのこと。
そこで、私はさらに以下のように、
少し意地悪な質問をしてみました(笑)。
私 「和紙や半紙に墨を使って筆で書いた遺言はいけますか?」
担当者「う~ん?!?!少し破れやすいし、あまりに達筆で書かれて
判読できない可能性があって、あまり望ましくないですね~」
私 「段ボール紙ではどうですか?」
担当者「・・・・。大丈夫と思いますが・・・。!」
「しかしながら、こちらも遺言書の現物そのものを保管しますし、
分厚くて素材の堅すぎて保管しにくいるものはどうかと思いますので、
ご遠慮いただきたいと思います。」
私 「和紙の巻き物に墨を使って筆で書いた遺言書はもちろんだめですよね!?
担当者「それって、スキャン出来ませんよね!?だめです!」
いかがですか?(笑)
以上より、
A4サイズのコピー用紙が望ましいと思います
ただ、上記のやりとりのような自筆証書遺言書は
「遺言書保管制度」を利用することが出来ないだけであって、
自筆証書遺言の法律上の様式がきちんと守られていれば、
自筆証書遺言として認められます。
4 費用は?!
実はネットや文献をみても、
どこにも書いておりません。
なので、
費用について問い合わせしてみました。
そこで、担当者は
「未定なので一切お答えできません」とのこと。
私が「謄本と同じ600円位ですか?」と尋ねても
「わかりません」とのこと。
なので、
正式に確定するのを待ちましょう。
ただ、問い合わせしたニュアンスや、
相続登記を活発化させたい日本の意向からすると
恐らく、そんなに高くはないと思われます
5 自筆証書遺言書のチェックはしてもらえるのか?
遺言書保管法第4条第2項には「無封」の遺言書と規定しております。
「無封」とは、読んで字のごとく
封のしていないということです。
つまり、
自筆証書遺言書を封筒にいれて封をするのではなく、
「裸でもってこい」
ということです。
でないと、保管申請の際に、
遺言書保管を担当する人が
遺言書の形式的なチェックができないからです。
具体的には、
自筆証書遺言の基本的な作法である、
全分自筆、日付、署名捺印を確認します。
よって、
無作法(要件を満たしていない)な自筆証書遺言ということで、
遺言が無効になるようなことは
よっぽどのことがない限り、
無いと思われます。
6 遺言書の保管申請は代理人が出来るのか?
結論から言うと、出来ません
「遺言者本人が必ず法務局に出頭しなさい」
と法律に決められております。(遺言書保管法第4条第6項)
そもそも遺言書は
「遺言をする人の最後の大事な意思」
です。
また、遺言書は
「家族に対するラストラブレター」
とも言われております。
最後の大事な意思を尊重する上でも、
ラブレターを代理で書かせることに対する不自然さからすると、
代理という制度はなじまないと思います。
7 何年くらい遺言書を預かってもらえるのか?
これも具体的には決まっておりません。
除籍等の保存期間が150年とのバランスを考えると、
相当長い間預かってもらえると思います。
5 遺言書が保管されているのを相続人はどうして知ることができるのか?
以下の手順が考えられます。
遺言者が遺言書保管制度を利用
↓
法務局から「保管証明書」を遺言者に交付
このタイミングで遺言者は相続人に対して「保管証明書」を提示して、
以下のように、告知することになるでしょう。
「遺言書を法務局に預けているから、
私が死んだら法務局に行って手続しなさい」
といった具合でしょうか。
また、法務局が遺言書を預かっているので
「改ざんされたり」、
「意地悪な相続人に隠されるおそれもない(笑)」
ということになります。
次に、遺言者が死亡したときはどなるのでしょうか?
相続人は「遺言書保管事実証明書」の交付を請求して、
相続手続きに入ることになります。
さらに、
遺言書保管法第9条第5項により
法務局は、遺言書情報証明書の交付または遺言書の閲覧がされてたときは、
すでに遺言書が保管されていることを知っているものを除く相続人等に対して、
遺言書を保管している旨を通知することになっております。
簡単にいうと、
相続人のうちのAさんが相続手続きに入ったら
Aさん以外の相続人に法務局が「遺言書預かってますよ~」と
お知らせするということです。
そして、
そのお知らせにより、
相続人全員が遺言書の存在を知ることになる
ということです。
6 遺言書保管制度を利用した遺言書は、家庭裁判所の検認は必要なのか?
遺言書保管保管法第11条より不要です
なぜなら、
法務局が厳重に預かっているので、
改ざんされないし、
破棄もされたり、
隠されたりされないからです。
7 結論
自筆証書遺言を書いた人は、
令和2年7月10日以降に、
最寄の法務局(出張所除く)に行き、
遺言書を保管してもらって下さい。