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会社の役員の責任にまつわる話
皆さん!こんにちは!
前回、
スシローの役員の怠慢により会社に損害が発生した場合、
当該役員はスシローに対して損害を賠償しなければならない
とお話しました。
本日は、会社の役員の責任にまつわる話を
していきたいと思います。
1 取締役の責任は意外に重い?!
取締役が仕事を疎かにしたために
(「任務懈怠(ニンムケタイ)」と言う。)、
会社に損害が発生した場合は、
取締役は会社に発生した損害額そのものを
賠償しなければいけません。
時には数億円規模になることもあります。
2 取締役の仕事を疎かにするとは
(1)取締役は会社法や会社の属する業界を縛る法律全て、
当然にきちんと守らないといけません。
なので、法令違反をした取締役は
当然責任を取らされることになります。
さらに、取締役が法令違反をするときは、
大体は、取締役会という会議で決められますので、
当該取締役会で異議を述べなかった取締役も
責任を取らされることになります。
つまり、取締役が
本心では法令違反をすることはダメだと分かっていても、
法令違反行為を黙って見過ごすことは、
経営のプロとしては法律上、失格ということになります。
(2)取締役は会社の経営においてベストを尽くさないといけません
(「善管注意義務(ゼンカンチュウイギム)」と言う。)。
なので、
取締役がベストを尽くさず会社に損害が発生した場合は、
会社に対して損害を賠償しなければいけません。
ただ、経営判断の原則と言って、
「取締役の高度な経営判断の過程や内容に著しい不合理がない場合」
は、責任を免れることが出来ます。
なぜなら、
経営の専門家であるからこそ取締役になれたのであり、
やはり、その人の判断を尊重すべきである
という理由があげられます。
また、
経営責任を取らされるリスクに晒される取締役が委縮してしまうと
無難な経営をすることしか出来なくなってしまい、
そうなると逆に会社や株主の利益を損ねてしまう
という理由もあげることが出来ます。
3 取締役という立場は割に合わない?!
前記経営判断の原則により、
取締役の責任を免れることが出来ると言っても、
「ベストを尽くす」とは基準が明確ではありません。
また、この経営判断の原則も結局は、
裁判で取締役が主張して争うことになり、
取締役が自身の経営判断に不合理な点は無いと
証明しなければいけません。
つまり、取締役は明確でない基準に縛られながら
日々の会社経営という激務をこなし、
いざ会社に損害が発生し、
当該取締役がベストを尽くしていないと判断されたら、
法外なお金を弁償しなければなりません。
なので、取締役という役職は、
もしかすると割の合わない役職なのかもしれません。
4 責任限定契約
以上より、会社の取締役は責任が重く、
割の合わない役職だとして
取締役になりたくないと考える人もいると思います。
つまり、経営センスに優れている人でも
法外な賠償請求をされるのを恐れるあまりに、
取締役になりたくないという人は
少なからず存在するはずです。
そこで、優秀な人材を確保するために、
会社法では「責任限定契約」という制度が存在します。
責任限定契約とは、
取締役が賠償をする範囲を
「法令で規定する額を限度とする」と
会社の定款に定めることが出来、
取締役はその限度だけの賠償で済むという制度です。
そして、
上記「法令で規定する額」とは役職にもよりますが、
報酬の2年分としたりすることが出来ます。
なお、この責任限定契約は
本店所在地を管轄する法務局で登記する必要があります。
取締役の人材確保で責任限定契約が必要とされる会社は、
廣森司法書士事務所までご相談下さい。