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【家族信託の登記の盲点】未登記建物がある場合、どうすればいいのか?!

1.【家族信託の登記の盲点】未登記建物がある場合、どうすればいいのか?!

 

 

 

 

世の中の建物には、

登記されていない、いわゆる

「未登記建物」

というものが存在します。

 

 

 

 

本来、

建物が建つと登記しないとだめなんですが、

結構放置されています。

 

 

 

 

実は、

建物を登記しなければ、

過料に処せられます。

(過料とは罰金みたいなもの)

 

 

 

 

しかし、

私の長い司法書士経験で

「建物を登記をしなかったから過料が来た!」

ということを今まで聞いたことがありません。

 

 

 

 

なので、

一応罰則はあるのですが、

現実来ないので

「みんな建物を登記しないのではないか」

と思います。

 

 

 

 

 

特に比較的古い建物や

田舎の建物に多かったりします。

 

 

 

 

 

本日は、

家族信託をするうえで

委託者所有の未登記建物がある場合

お話します。

 

 

 

 

 

ちなみに、

途中難しいことを書いていますが、

その部分は飛ばしてもらっても結構です。

 

 

 

 

また、きちんと、

読み飛ばすところは指示しております。

 

 

 

 

 

読み飛ばしても

一般の方でもわかるように書いています。

 

 

 

 

また、最後に、

「一番大事なこと」

を書いていますので、

なるだけ最後までお読みください。

 

 

 

 

2.結論

 

 

 

 

いきなり、結論ですが、

①委託者名義に表示登記をして

②委託者名義に所有権保存登記を経由し、

③受託者名義に所有権移転及び信託の登記申請を

しなければいけません。

 

 

 

 

つまり、

未登記でなければ、

上記③の登記申請だけで大丈夫ですが、

未登記だと上記①及び②の登記を

余分にしないといけません。

 

 

 

 

 

3.なぜ上記手順が必要なのか

 

 

 

 

委託者所有の未登記建物があると、

少し手間と余計な出費が

必要になりそうです。

 

 

 

 

なので、信託契約書で

「この建物は未登記建物なので

 信託の登記は別にしなくてもいいということを

 信託契約書に書いておけば大丈夫ではないか」

という意見が出て来そうです。

 

 

 

 

しかし、

これではダメなのです。

 

 

 

 

それは、

信託法第34条1項1号と2項が根拠です。

 

 

 

 

以下のとおり、その条文を引用します。

(一般の方は、飛ばして下さい)

 

 

 

 

信託法第34条【分別管理義務】

 

1 受託者は、信託財産に属する財産と固有の財産及び他の信託の信託財産に属す

る財産とを、次の各号に掲げる財産の区分に応じ、当該各号に定める方法により、分別して管理しなければならない。ただし、分別して管理する方法について、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。

 

(一)第14条の信託の登記又は登録をすることができる財産(第3号に掲げるのを除く。)当該信託の登記又は登録

 

2 前項ただし書の規定にかかわらず、同項第1号に掲げる財産について第14条

の信託の登記又は登録をする義務は、これを免除することができない。

 

 

 

 

要は、

「不動産はキチンと信託の登記をしなさい」

と言っています。

 

 

 

 

そして

「信託登記は別にしなくてもいいよ

 というような家族信託の契約をやってはいけません!」

と規定しております。

 

 

 

 

       ↓ 以下の( )部分は一般の方は読み飛ばして下さい。↓

 

(一応、実務上で、例えば抵当権付債権の信託がされる場合における抵当権については、一時的とはいえ、信託の登記を猶予することが一般的とされています。これもあくまで猶予であって、抵当権が実行が必要になった際には付記登記が必要になります。)

 

 

 

 

一応、実務上、

信託の登記を猶予することもあります。

 

 

 

 

しかし、

私がこのブログであげた事例では、

猶予は認められる余地はないですし、

きちんと手順を踏んで信託登記を

しないといけません。

 

 

 

 

4.どのようなリスクがあるのか?!

 

 

 

 

もし、

未登記建物を手順を踏んで信託登記せず

委託者が自分名義で表示登記から保存登記をして

委託者が第三者に売却して

第三者名義で登記を備えられたら

どうなるのでしょうか?

 

 

 

 

結論、

その不動産は信託財産とならず、

その第三者のものになってしまいます。

 

 

 

 

もし、そうなったら、

信託財産に損が発生したことになるので、

受託者はその損を自分のお金で

穴埋めしなければいけません。

(信託法第40条第1項1号)

 

 

 

 

この場合、

受託者は分別管理義務違反と

損失との間に因果関係が存在しないことを

証明できないかぎり、

免責されません。

(信託法第40条第4項)

 

 

 

 

5.これを知らない専門家は意外に多いかも?!

 

 

 

 

本日で一番大事なことを今からお話します。

 

 

 

 

実は、

本日のブログの内容については、

後輩から2回ほど

相談された経験があります。

 

 

 

 

そこで、後輩に対して

条文を指摘しながら教えたのですが、

結構感謝されました。

 

 

 

 

そして、後輩が一言、

「すごく気になること」

を言いました。

 

 

 

 

『グーグルで「家族信託 未登記不動産」

 と検索しても出てこない』

とのこと。

 

 

 

 

そこで、

私もググってみましたが、

出てきませんでした!

 

 

 

 

むしろ、

間違ったことを書いていた専門家もいました(笑)。

 

 

 

 

さらに、後輩に対して

条文を見たか!?」

と言ってみました。

 

 

 

 

すると、

後輩が言うには

条文は読んでいませんが、

 実務書等をもう一度あたってみます」

とのこと。

 

 

 

 

「おえおえ!実務書等よりも、まずは条文やろ!!」

と突っ込みましたが、

ここでは、あえてそれ以上深堀しません(笑)。

 

 

 

 

さて、

家族信託のHPがかなり普及してきた昨今、

この様な基本的なこと

HPで発信していないのは、

果たして、なぜなのか?

 

 

 

 

当たり前過ぎて書いていないのか?

 

 

 

 

もしくは、知らないから、

または、よく分からないから

発信を躊躇しているのか?

 

 

 

 

確固たる理由は分かりません。

 

 

 

 

以前、

家族信託の谷間の問題を書きましたが、

今回のブログは

そのようなややこしいものではなく、

信託法の条文にきちんと

のっていることです。

 

 

 

 

つまり、

「基礎中の基礎」

ということになります。

 

 

 

 

なぜなら、

「法律家は事案を条文に当てはめて

 きちんとした結論を導くことが仕事」

だからです。

 

 

 

 

そして、

条文の文言では解決できないときに、

条文を解釈している実務書等の出番なのです。

 

 

 

 

つまり、

条文実務書等という順番であり、

決して、実務書等条文という順番ではありません。

 

 

 

 

これは知っておいて欲しい記事です。是非お読みください。