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家族信託契約書の例をネットでダウンロードして自分でやってはいけません!
1.家族信託契約書の例をネットでダウンロードして自分でやってはいけません!
最近、
ネットで検索すると
「家族信託契約書の例」を
ダウンロードすることができます。
そこで、
色々見てみると、
やはり玉石混交です。
しかも、
玉ではなくて
ほとんど「石」です。
さて、
私はこの家族信託契約書の例(ひな型)を
ネットでオープンする理由が
いまいちわかりません。
相続登記申請書、
遺産分割協議書など、
単純な手続き業務の例(ひな型)を
ネットで掲載するのは
それなりに合理性はあると思います。
理由は、
単純な業務だし、
少々ミスっても
取り返しのつかないことにならないし、
ご自身で相続登記手続をすることにより
お金を節約することも出来るからです。
しかし、
家族信託となると、
100人いれば100通りの
家族信託契約書が存在することになります。
つまり、
依頼者のニーズにあった
家族信託契約書を作成するには、
プロとして色々アレンジしないといけないわけです。
プロがネットの家族信託契約書の例(ひな型)をベースに
色々アレンジして家族信託の契約書を
作成するのは、可能ですが、
一般の方では100%無理だと思います。
そこで、
一般の人が家族信託契約書の例(ひな型)を
アレンジすることなく
家族信託の契約をするとどうなるのか?
取り返しのつかない悲劇が
起きるということは
皆さんも容易に想像できるかと思います。
この様な取り返しのつかない悲劇が起きると
簡単に想像できるのに、
どうしてそのような家族信託契約書の例(ひな型)を
ネットであげるんでしょうか。
まあ、
恐らくSEO対策の手段なのでしょう・・・。
ただ、それだったら
もう少しマシな家族信託契約書の例(ひな型)を
載せて欲しいものです。
本日は、
その中でも気になった
家族信託契約書の例(ひな型)の文言について
指摘したいと思います。
2.当初受託者の任務の終了する事由
実務上、
当初受託者に万が一のことがあったときに、
その当初受託者の代わりに受託者となる
「第二受託者」を決めておきます。
この万が一の時って、
例えばどんな時なのか?
それは、
「死亡、判断力の低下、信用力の低下等」
と言ったような状態の時です。
その状態を、
家族信託契約書に落とし込んだ文言として、
「信託法第56条1項各号に掲げる事由が生じた時」
というように記載します。
そこで、
信託法第56条1項2号を見ると、
受託者が「成年被後見人」、「被保佐人」になったら
任務終了となっています。
この理由は、
受託者として家族信託の事務が
「判断力の低下によりできない」
ためです。
ここで、
注意しなければいけないのは、
信託法の条文には「被補助人」が入っていないことです。
さて、専門的に
被補助人とはどんな人かと言うと、
「精神上の障害によって
事理を認識する能力(判断能力)が
不十分な人のこと」
を言います。
ズバリ簡単に言うと、
「物忘れがひどくなりつつある感じの人」
です。
なので、
このような人に
受託者の仕事を任せるのは酷ですし、
判断力の低下により受益者に
損害を与えてしまうかもしれません。
しかし、
信託法は被補助人になっても
受託者の任務は終了しないとなっています。
となると、
もし受託者が被補助人になってしまったら
どうなるのか?
考えただけでも、
少しゾッとしますよね。
なので、
上記取り決めでは不十分と言わざるを得ません。
つまり、
補佐開始の審判を受けたことを
契約書にいれておくべきなのです。
なお、
そのネットで出ていた契約書には
任意後見監督人選任の審判
については書いていました。
3.第二受託者の決め方
さらに、
以下のような第二受託者の決め方を
していました。
「受託者があらかじめ書面により指定した者を後継受託者とする。」
皆さん、
これってどう思いますか?
受託者が単独で後継受託者、
いわゆる第二受託者を決めれそうな感じがします。
一般的に、
第二受託者は信託行為、
つまり信託契約で決めるので、
委託者と受託者の二人で話し合って決めます。
つまり、
受託者の一存で
第二受託者を決めることは出来ません。
そこで、
以下のような反論が予想できます。
受託者が単独で第二受託者を
決めることができるということを
「信託契約の時に委託者が認めた」
と言うような感じです。
しかし、
信託法第62条を見てみると、
基本的に、第二受託者を決めるのは、
まず第一に①委託者と受託者の家族信託契約時(信託行為)
決めていなかったら②委託者と受益者の合意
最終的に③裁判所が決めるというようになっています。
さらに、
信託法第62条において、
上記②において、
すでに委託者がいない場合は
「受益者が単独で第二受託者を決める」
ことになります。
つまり、
受託者は受益者のために
一生懸命頑張らないといけないので、
委託者がいないときは受益者が単独で
第二受託者を決めることについては、
一定の合理性があります。
(家族信託は受益者が一番エライ)
また、
信託法第62条には
「信託行為に別段の定めがあるときは、
その定めによる」
という文言が入っていません。
別段の定めとは、
信託法の条文ではある事を決めているけど、
「お互いに話し合いでその決め事を
なかったことにしてもいい」
ということです。
そこで、
信託法第62条は、基本的には、
①委託者と受託者の合意
次に②委託者と受益者の合意
委託者がいなければ受益者単独で
次に③裁判所が決めるというようことを
「お互いの話し合いで、
この取り決めはなかったことにしよう」
ということは出来ないということになります。
つまり、簡単に言うと、
何があっても、何があろうとも
①委託者と受託者の合意
②委託者と受益者の合意(委託者がいなければ受益者単独)
③裁判所が決める
この順番で第二受託者を決めなさいということになります。
となると、
「第二受託者を受託者単独で指名して決める」
という取り決めはどうなるのでしょうか?
当然、デキないということになります。
4.委託者死亡時の取り決めが不適当。莫大な税金がかかる
「第〇〇条 委託者の地位は相続により承継しない。」
以上のように取り決めています。
この取り決めだと、
家族信託が終了した時の税金が
多額になってしまうため、
ダメなんだと以前ブログで書きました。
「あなたの家族信託の契約書は大丈夫?~委託者の地位の相続について~」
単純に、
信託不動産の評価が1憶円だったら、
約300万円以上の損をします。
なお、正解は
第〇〇条 委託者の地位
「委託者の地位は相続により承継せず、委託者の死亡によりその地位は受益者へ移転し、当初委託者の権利は消滅する。」です。
「委託者の地位は相続により承継しない」
という取り決めになっている方。
信託契約書の変更及び信託目録の変更をしないと
エライ損をしてしまう可能性があります。
(でも、もしかすると、もう手遅れかも知れません。なぜなら、委託者兼受益者が認知症になっていたらもはや変更契約は不可能だからです・・・。ちなみに、その司法書士に言うてあげたほうがええのかな~?ただのおせっかいなのかな~?その司法書士と友達になれればな~。せめて、私のブログを見て訂正してくれたら・・・。なんかの本やブログ等を見たり、聞いたり、誰かに指摘されたりして、早く、気づいてくれへんかな~)