ブログ
カテゴリー
家族信託
【家族信託の目的】意味のある信託の目的と意味のない信託の目的
家族信託には
「信託の目的」
を決めないといけません。
さらに、
「信託の目的」は登記事項であり、
家族信託契約書の大原則という位置づけなので、
非常に大事な事項となります。
さて、
信託の目的の例をあげると
以下のとおりとなります。
(信託の目的)
第〇条 本信託の目的は、第△条記載の財産を信託財産として管理運用及び処分を行い、受益者らの安定した生活と福祉を確保し、かつ適正な管理運用を通じて資産の有効活用を図るとともに、信託不動産につき何某家の資産として適切な承継を図ることを目的とする」
(↓新訂 新しい家族信託 弁護士 遠藤英嗣 著 日本加除出版 494頁から引用↓)
この信託の目的は、
ある財産を家督相続(直系の長男に引き継ぐ)のように
引き継いでいってほしいという内容です。
さすが、
家族信託の権威である遠藤英嗣先生が
起案した信託目的です。
私も家族信託における信託の目的を考える際は、
遠藤英嗣先生の書籍を
多いに参考にさせて頂いております。
では、
次に以下の家族信託の目的はどうでしょう?
(信託の目的)
第〇条 この信託の主たる目的は、委託者の心身に変化があったとしても、信託した財産を受益者のために管理・運用・処分を行うことによって、先祖伝来のS家の財産を護っていって欲しいという委託者の現在の意思を反映した財産管理及び委託者の相続対策を継続すること、委託者の直系血族に対する資産承継を行うこと、そして、受益者の生活・介護・療養・納税等に必要な資金を給付し、受益者が心身共に健やかに過ごせる環境を整えることが本件信託に込められた願いである。受託者は、本信託の受任者として、S家の資産の適正な管理と円満な承継を実現することを旨として任にあたるものとする。
(家族信託契約 弁護士 遠藤英嗣 著 日本加除出版株式会社 263頁引用)
なお、上記も、
↓遠藤先生著作の書籍からの引用です。↓
いかがですか?
ちょっと、
前者に比べると後者は長いですよね~
そこで、皆さんにとって、
前者の信託の目的と後者の信託の目的の
どちらが「いいなあ~」
と思いますか?
ちなみに、
遠藤先生は後者の信託目的を以下のように、
こき下ろしております(笑)。
「信託の目的が情緒的で、重複するなどまとまりがない。単なる「願い」や「願望」にとどまるのか、何を主として、何が副次的な目的なのか意味が不明である」
(家族信託契約 弁護士 遠藤英嗣 著 日本加除出版株式会社 263頁~264頁引用)
以上のように、コテンパンです(笑)。
2.実はどちらも正解
実は、
前者及び後者の信託の目的は
どちらも不正解ではありません。
つまり、
どちらも正解であるといえます。
確かに、
後者の信託の目的は
情緒的で重複するフレーズやワードがあります。
しかし、ここで大事なのは、
「重複があってもいいが、
漏れがあるのが一番アウト」
なのです。
皆さんも、常識的にみて
漏れがあるとダメだということは
簡単に分かって頂けると思います。
3.結局は好みの問題
実は、
私は個人的に後者の信託の目的の方が好みです。
なぜなら、
遠藤英嗣先生が指摘する通り、
「情緒的だから」
です(笑)。
一方で、前者の方は、
少し事務的でお堅い感じがします。
4.意味のある信託の目的と意味のない信託の目的
法律家はある物事に対して、
判例や多数説、実務の動向をもとに、
法律の知識、法律を使った論理思考で
物事を突き詰めれば、突き詰めるほど、
誰しもが「同じ正解」を導くことになります。
これは、優秀さゆえに起こる出来事なのです。
なので、
優秀な法律家が作った信託の目的は
ほとんど同じになり、
なんら差別化されていない信託の目的に
成らざるを得ないのです。
一方で、
後者の信託の目的は「情緒的」で
法律の専門家らしくないフレーズやワードを
使っております。
こちらの方が、
「何か温かみがある」と言うか
「当事者の心情が表れている」と思いませんか?
つまり、
後者の信託の目的の方が、
「意味のある信託の目的」
だといえます。
5.身近な具体例
では、ここで、
ちょっとイメージしづらい方に
簡単な例であげてみます。
皆さんは
「トヨタのクラウンとBMW5シリーズ」だと
どちらが「意味のある車」だと思います?
ともに、
役に立ち、運転も快適、性能の違いに差はありません。
しかし、
BMW5シリーズの方が
欧州の歴史的、「情緒的」な面が感じられ、
そして所有することにおける「ステイタス」等を考慮すると、
「意味のある車」
だと思いませんか。
恐らく、
コテコテのトヨタクラウンのコアなファン以外は、
ほとんどの人がBMWの5シリーズの方を
「意味のある車」
と思うはずです。
6.これからの司法書士業界
司法書士業界は
多店舗展開の大手法人
地元密着の小規模事務所の
二極化が進むことになります。
となると、
大手法人は組織であるがゆえに、
意味のある仕事よりも
「効率性を重視する仕事」
に重きを置く経営にシフトすることが
賢明な選択となります。
そして、
地元密着の小規模事務所は
「意味のある仕事」
をしないと大手司法書士法人に
駆逐されるようになると思います。
ちなみに、
私は地元、大阪吹田市で
「小規模零細司法書士事務所」
を営んでおります。
当然、「意味のある仕事」
を追求していかないと生き残ることは出来ません。
つまり、
「仕事に魂を吹き込むまないといけない」
ということです。
昨日のブログを参照くださいますと、
私の仕事のスタンスを分かって頂けると思います。