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家族信託
家族信託の依頼を受けないこともあります。最終回
前回の記述の要点を
引用すると以下のとおりです。
事例としては、
「嫌がらせのような家族信託の依頼」を受けるかどうか
というものです。
結論から言うと、私は受けないのですが、
その理由を以下のとおり、
法学の観点である
「実定法主義」と「自然法主義」
という観点からお話しします。
1.実定法主義と自然法主義という考え
実定法主義とは、
簡単に言うと以下のとおりです。
「法律に書いているからやっていい。」
という意味です。
なので、
その法律の内容は問題としないので、
「悪法もまた法である」
という考えになります。
また、
「法律にダメ」と書いていないから
やってもいいという考えにもなります。
一方で
自然法主義とは、
簡単にいうと以下のとおりです。
「自然の摂理や人間の本性、
本来の道理や倫理等を取りいれる考え」
です。
なので、
自然法主義では、
「法の内容そのもの」
が問題となります。
以上を踏まえて、さらに深堀します。
2.実定法主義では足元がすくわれる可能性がある
実定法主義の考えは確かに合理的で
一見良さそうに思えます。
しかし、
この実定法主義にのっとって
後々えらい目にあっている人や会社があります。
それは、
ホリエモンの旧ライブドアであったり、
消費者金融が債務者から過払い請求を
される事件です。
3.ホリエモンの旧ライブドア
その昔、
旧ライブドアが時間外取引により
ニッポン放送株を大量に取得して
世間を騒がせました。
その時、ホリエモンは
「法律で禁止されていないから大丈夫でしょ」
ということでひょうひょうとしてました。
そして、
この時の金融庁の幹部も
「脱法的であるが違法ではない」
というコメントをしており、
ホリエモンはこの「グレーゾーンの部分」を
活用したということになります。
さらに、ホリエモンは
「倫理的にはだめなのでは」
というマスコミからの質問に
「いや法律的には違法ではないから・・。」
の一転張りでした。
4.過払い請求
法律上、
消費者金融は債務者に対して
「29.2パーセントの利息を取ってもいい」
こととなっていました。
それは、
貸金業規制法という法律に
「きちんとはっきりと」
記載されていました。
さらに、
多くの消費者金融は
国が決めたガイドラインもきっちりと守ったうえで
高利貸しを営んでいたたのです。
つまり、
貸金業者は法律をきちんと守り、
さらにはお国の指導にも従順に従って
自分たちの商売である貸金業を
「まじめ」に営んでいたのです。
しかしながら、
あとあとになって
「やっぱり利息は18%までしかとってはだめです」
という最高裁判所の判例が出てしまいました。
さらに、
貸金業者は貰い過ぎた利息を債務者に返してあげなさい
ということにもなりました。
消費者金融の最大手の武富士が
過払い請求されすぎて
つぶれてしまったのは記憶に新しい出来事です。
5.ホリエモンの旧ライブドア・過払い請求でわかること
ホリエモンの旧ライブドアは、
法律の不備をついて時間外取引をしました。
つまり、ここでのキーワードは
「実務に法律がついていけていない」
という状況です。
そうこうしているうちに
ホリエモンはライブドア事件で
偽計取引・風説の流布
有価証券報告書の虚偽記載でつかまりました。
次に、
消費者金融も
平成18年の最高裁判所の判決の後は
「完全に息の根」
を止められてしまいました。
その判例の内容は以下のとおりです。
「今まで29.2%の金利をとってもいい」
と法律上書いていたけど、色々な面を考えると
「やぱっりダメ」ですという内容です。
なので、
これから29.2%の金利を取ってもダメですし、
今まだ多くもらった金利を貸金業者は債務者に返してあげてください。
となってしまいました。
要は、
貸金業者にとっては
「後で出来たルール」
で違法なことをしていると
言われる羽目になったのです。
つまり、貸金業者は
「後だしじゃんけんに負けて」
違法な事に手を染めているということになってしまい、
全国の債務者にお金を返さなくてはいけなくなりました。
ここでもキーワードは
「後だしじゃんけんに負けて」
です。
6.2つのキーワード
先ほど、出てきた
「実務に法律がついていけていない」
「後だしじゃんけんで負けて」
この二つのキーワードに着目します。
「実務に法律がついていけていない」ということは
思うに、実務の変化が目まぐるしく、
社会の変化が早すぎるからです。
次に
後だしじゃんけんとは
「倫理が先にあり、ルールはその後」
ということになります。
以上より、
「変化の速すぎるこの不確定で先が読めないこの時代」は
ルールさえ守っておけばいいというのではなく、
まず、はじめに倫理的な面に立ち返って
色々なことを判断しなければいけない
ということなります。
7.私たちの業務は常に倫理に立ち返らなければいけない
前回の記述の要点を
引用すると以下のとおりです。
事例としては、
「嫌がらせのような家族信託の依頼」を受けるかどうか
というものです。
将来、ほぼ高い確率で争いが起きます。
そして、このような家族信託は、
多くの人を間違いなく不幸にする家族信託です。
そこで、
このような多くの人を
不幸にする家族信託を受ける司法書士も
世間に存在すると前回書きました。
そして、
その司法書士の言い分は以下のとおりです。
「依頼者にはあらゆる説明責任も果たしたから
将来、依頼者にトラブルが起きても
司法書士サイドはなんら責任を負いません。」
という念書を貰っている。
そして、
そのような念書をもらったし、
「いざトラブルがおきても大丈夫」
というような言い分です。
以上の依頼者と取りまとめた書面は
確かに「ルール」として文章されたものです。
しかし、ここで
お互いが相互に納得して確認したことを
文章で取り交わしたから
専門家サイドには全面的に責任が無いと
言い切れるのでしょうか?
僕の今までのブログを読んでくださっていたら
そうとは言い切れないですよね~。
そうなんです
私はすべてのあらゆる物事において、
その土台には「理念」や「倫理」や「道徳」
と言った考えがあると思っています。
分かりやすい例えを上げると、
「仕事」です。
「仕事」とはお金さえ稼げればいいのか?
少々、強引なことをしてでもお金さえ稼げればいいのか?
私は決して、
「仕事はお金さえ稼げればいい」
とは思っておりません。
そして、
先程の旧ライブドアや過払い請求のことを考えると、
「倫理」や「道徳」と言った土台の上に、
「法律」が成り立っていると
皆さんもかんたんにわかると思います。
つまり、
自然法主義(倫理等)の土台の上に
実定法主義(ルール等)が存在するからです。
なので、
多くの人を不幸にする家族信託は
私にとっは強烈な違和感を感じ、
むしろ嫌悪感すら抱いてしまいます。
8.総括
さて、
この世には、数多くの節税対策があります。
節税対策は、税法だけでなく、
民法や信託法等あらゆる法律とセットで
実施していきます。
つまり、
節税対策は税理士と司法書士とで
組んですることが多いです。
私は、
世間で言われる一般的な節税対策については
率先して行っています。
しかし、
私の心の中で少しでも違和感を感じる節税対策は
(グレーゾーンの節税対策)
絶対にお客様に提案をしたりしません。
さらに、
そのような違和感を感じる節税対策をお願いされても
私は絶対にしません。
中には、
「あらゆるリスクを説明してお互いが納得して
書面で取り交わしたのでする」という
「実定法主義」の司法書士もいます。
しかし、
前述のとおり、私は絶対にしません。
理由は、
私は「自然法主義」の司法書士だからです。
しかし、
実際の世間はどちらかというと
「実定法主義」の司法書士や税理士の方が
重宝されているように思えます。
つまり、
「お金さえ得をすればいい」
という考えの人が多いのでしょう。
なので、
そういう意味では、
「私は世間の大多数から選ばれない
出来の悪い法律の専門家」
のかも知れません(笑)