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不動産取引
「不動産売買における法律」にまつわるお話
皆さん、こんにちは
本日は、私の得意分野の
「不動産売買における法律」にまつわるお話です。
さて、皆様もなんらかの理由で
お持ちの不動産を売却しなければいけない時が
あると思います。
その場合、
皆様は不動産仲介会社に売却の依頼をなされると思いますが、
どの不動産会社でも同じだと思ってはいけません。
実は、非常に面白い
(と言うよりも売主にとっては酷な)
裁判例があります。
1 平成9年1月28日東京地方裁判所判決
(判例時報1619号98頁)
一般の方が、
不動産を売却するときに、
不動産のプロである不動産仲介会社に依頼しました。
そして、
その不動産仲介会社が説明義務を怠り、
買主から裁判を起こされました。
普通に考えると、
不動産のプロの不動参仲介会社だけが
責任を取らされると思いますよね。
しかしながら
「不動産の素人である売主個人にも責任がある」
というのがこの裁判例です。
2 上記裁判例の理由
売主は
不動産をきちんと買主に引き渡す義務があり、
買主は
売主から不動産をきちんと引き渡してもらう権利があります。
そして、
仲介会社は
売主を補助する人といえます
(以下、「履行補助者」と言う)。
そして、
履行補助者とは
「売主が買主に対する義務を果たすために使用する者」であり、
売主の手足となって動く者を言います。
つまり「履行補助者」≒「お使い」です。
3 民法上の履行補助者の理論(≒お使いの理論)
売主に落ち度がなくても、
履行補助者である不動産仲介会社に落ち度がある場合、
これを売主の落ち度とする事が出来るのであろうか
という事が問題になります。
そこで、
民法上の「履行補助者の理論」(≒お使いの理論)
に当てはめてみると、
売主は履行補助者である不動産仲介会社を使う事によって
活動する幅を広げ利益を得ているから、
履行補助者である不動産仲介会社の行為によって生じるリスクについては、
これを売主が負担するのが公平である。
よって、売主の落ち度とは、
売主自身の落ち度及びこれと同視できる事も含む
と広くとらえるべきであり、
履行補助者の不動産仲介会社の落ち度も
売主自身の落ち度と同視出来るので、
原則として、その場合にも売主は
リスクに対する責任を負うと考えるのが通常である。
以上が民法上の履行補助者の理論(≒お使いの理論)です。
4 もっと簡単な例で例えると
上記3は少し専門的な話であり、
少し分かりにくいと思いますので、
以下のとおり、簡単な例をあげます。
それは、ズバリ
「親が子どもにお使いを頼む事と同じ」
だと思って下さい。
つまり、
親は自分が忙しいから
子供にお使いを頼みます。
そして子供にお使いを頼んだからには
「お使いの責任は、頼んだ親の責任」
になります。
例えば、お使いを頼まれた子供が、
お店で商品を購入して帰る時に、
店に並んでいるお菓子をどうしても食べたくなって、
そのお菓子を子供が食べてしまったとします。
となれば、当然、お使いを頼んだ親が
そのお店に対して、
子供が食べたお菓子を弁償しなければいけません。
よって、これを
売主と不動産仲介会社との関係に当てはめると
「自分(売主)が頼んだお使いの人(不動産仲介会社)が、
何かミスを犯して他人(買主)に迷惑をかけた時は、
当然、自分(売主)も責任を取りなさい」
という事です。
5 教訓
不動産売却における不動産仲介会社は、
慎重に選ばなければいけません。
担当営業マンの感じが良さそうで、
信頼出来そうだからという情緒的な理由ではなく、
担当営業マンの能力・仕事に対す取組み姿勢や資質、
そして、その担当営業マンが所属する会社の規模、歴史、社風、クチコミ、
行政処分を受けたことはないか等の実質面を
総合的に考慮して選ぶべきなのです。