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知らなかったでは済まされない相続手続! その2

今回のコラムは、前回の続きです。

まずは、前回のあらすじをおさらいします。

主人公は昔の国民的大スターの「力道山」の「相続人?!」です。

力道山は多額のプラスの財産を残して亡くなりましたが、

それに勝るとも劣らずマイナスの財産、つまり「多額の借金」も残して亡くなったのです。

なので、力道山の相続人は、

暴力団さながらの剣幕で取り立てに来た借金取りに恐れをなして、

あっさり「借金を認めて、その借金を一部返してしまった」のです。

実は、

相続人の「故人の借金を認め、故人の借金を返してしまった」行為を

「法定単純承認」と言います。

ちなみに、「法定単純承認」とは

亡くなった方のプラスの財産もマイナスの財産も

無限に引き継がなければならない事です。

以上、前回のあらすじです。

今回は、「では力道山の相続人はどうすれば良かったのか?」というお話をします。

1.相続財産には、一切手をつけない!

私たち、法律の専門家は

相続人から被相続人が亡くなって間が無い状態で相続の相談を受けた時、

「取り合えず、亡くなられた方の財産には、一切手をつけないで下さい!」

と言います。

なぜなら、

前述のとおり、亡くなられた方の財産に手をつけると、

「法定単純承認」に当たってしまい、

「限定承認」や「相続放棄」が出来なくなってしまうからです。

また、

当然「亡くなられた方の預貯金や現金を使う事」も

「法定単純承認」に当たります。

さて、ここで

「葬儀費用」はどうなるのかという疑問が湧いてきます。

一般的に「葬儀費用」は、

相続人の方が亡くなられた方の現金又は普通預金からキャッシュカードでおろして、

お支払しているケースがよくあります。

この行為は、「法定単純承認」にあたるのでは!と普通は思いますが

「妥当な範囲内での葬儀費用を亡くなられた方の預貯金からお支払しても、

法定単純承認には当たらない」という高等裁判所の判例があります。

なので、身分相応の妥当な範囲内で

「葬儀費用」を亡くなられた方の財産から使ったとしても

「法定単純承認」に当たらないので、ご安心下さい。

また、換金価値の無い物の「形見分け」も「法定単純承認」に当たりません。

2.時間稼ぎをする

亡くなられた方のプラスの財産とマイナスの財産を把握しなければ、相続を

「単純承認するのか!?」
「限定承認するのか!?」
「相続放棄をするのか!?」

というのは、なかなか出来ないものです。

なので、法律上、

相続を単純承認及び限定承認又は相続放棄するかの猶予期間として、

自分自身に相続開始を知った時から3ヵ月以内と決められています。

しかしながら、

3ヵ月で亡くなられた方のプラスの財産とマイナスの財産を把握するのは、

3ヵ月では到底、無理なケースもあります。

恐らく、力道山の残された家族も

3ヵ月でプラスとマイナスの財産を把握するのは、無理だったでしょう。

そこで、

この期間をもう少し伸ばして欲しいという申立を

家庭裁判所にすることになります。

あまりに濫用的に期間を延ばすことは許されませんが、

妥当な範囲内で期間延長は認められますので、全く焦る必要はありません。

3 教訓

力道山の相続人が以上のことを知っていたら、

相続に関してそれほど苦しまなくて済んだのかも知れません。

まさに、

「法律は弱者の味方ではなく、知っている者の味方である」

という典型事例です。

よって、相続については

生前にプラスの財産、マイナスの財産を把握した上で、

「遺言」「家族信託」を検討し、万全の準備をすることを

法律の専門家として強くおススメ致します。

これは知っておいて欲しい記事です。是非お読みください。