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相続・遺言
相続放棄と生命保険金
1 相続と相続放棄
相続とは、法律上、
亡くなられた方(以下、「被相続人」という。)の
一切の財産を引き継ぐことを意味します。
一切の財産の具体例を挙げると
現預金・不動産・有価証券等はプラスの財産、
借金等がマイナスの財産です。
なので、相続人は
被相続人のプラスとマイナスの財産を引き継ぐので、
プラスの財産だけを引き継いで、マイナスの財産は引き継がない
という都合の良いことは出来ないことになります。
そこで、
プラスの財産が無く、マイナスの財産だけがある場合、
相続人はどうすればいいのでしょうか。
そういう時には、
相続放棄という手続を利用するのが一般的です。
相続放棄とは、
亡くなられた方のプラスとマイナスの財産の一切を引き継がない手続ですので、
被相続人が借金まみれであっても、
相続人が相続放棄をすれば、
相続人は被相続人の借金を払わずにすむことが出来ます。
2 相続放棄をしても生命保険金は受け取れる
さて、被相続人が
生命保険金の受取人を相続人とする生命保険契約をしたとします。
そこで、相続人が
被相続人の相続に関して相続放棄をした場合、
当該相続人は生命保険金を受け取れるのでしょうか❓
それは、ズバリ
受け取ることができるのです。❗❗
なぜなら、生命保険金は、
原則として相続財産ではなく、
被保険者(被相続人)の死亡によって発生し、
あらかじめ指定された「受取人」たる相続人の
「固有の財産」として支払われるからです。
よって、
「相続放棄=一切何ももらえない」と思い込んでいる人がほとんどなので、😟
「相続放棄をしても生命保険金は受け取れる」という知識は
「お金を守る武器」と言えるでしょう。⚔️
3 制度的抜け穴(いわゆる逃げ得スキーム)
とはいえ、
「相続放棄をしても生命保険金は受け取れる」というこの現行の制度について、
私はどうしても納得のいかない点があります。🤔
それは、お金を借りている債務者の「逃げ得」です。🏃🏻💨
例えば、以下の事例を見て下さい。
・被相続人には1億円の借金があった(マイナスの財産)
・被相続人には現金1億円がある(プラスの財産)
ここで、
相続人が相続放棄をせず現金1億円を相続したら、
必然的に1億円の借金も相続するので、
相続人は相続した1億円で相続した1億円の借金を返済してチャラになります。
では、上記①②の事例において以下のように、生命保険契約をすればどうでしょう。
ⅰ)生前に多額の借金があると知りつつ、父が生命保険契約をしっかりと準備
ⅱ)保険金受取人に相続人たる子を指定しておく
ⅲ)父死亡後、相続放棄によって相続人たる子は借金を免れる
ⅳ)相続人たる子は保険金をまるまる受け取り、債権者は誰にも借金の請求が出来ずに泣き寝入り
いかがですか?
これって、明らかに、債務者の逃げ得
だと中学2年生でもわかることだと思います。💡
4 おわりに
以上、
相続放棄と生命保険金の制度的抜け穴(いわゆる逃げ得スキーム)をお話しましたが、
最高裁も「受取人が指定された生命保険金は相続財産ではない」と明言しており、
現行法では保険金の“特別扱い”が強く保護されております。
とはいえ、
合法でも明らかな逃げ得であると見て取れるから、
法の設計に明らかな不具合があるといえ、
将来的に以下のような議論が展開される可能性があると私は思います。
・一定額を超える保険金は相続財産に準ずる扱いとする
・債権者保護を目的とした保険契約への制限(たとえば死亡直前の高額契約など)
いかがですか?
皆様はこの逃げ得スキームを採用しますか?
それとも採用しないですか?