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おひとり様の遺言エトセトラ(宗教法人に遺贈したい場合)

本日は、前回の続き、おひとり様の遺言書作成の勘所のお話をします。

1 熱心な信者さんであるおひとり様の場合

(1)おひとり様にとってのお世話になった宗教法人

私の経験上、おひとり様の中には、

自分自身が信仰している宗教に関して、

熱心な信者さんである場合も多くみられました。

なので、おひとり様にとって

お世話になった宗教法人に遺言による贈与(以下、「遺贈」という。)をしたい

という要望は自然な気持ちから出るものであると見てとれます。

(2)宗教法人の特徴

宗教法人は、宗教法人法という法律で

財産管理等について、一般の法人とは一線を画す厳しい内容が盛り込まれています。

例えば、宗教法人所有の財産を処分するには、

信者さんに対する公告等、厳しい規定等が設けられています。

また、宗教法人は、

つまり、宗教法人には

「法 <  宗教上の教え」という図式の方が重要であり、

たとえ法律の範囲内で信者さんからの遺贈が認められるとしても、

それが宗教上の教えに反するようであれば、

特に、宗教法人に対して不動産を遺贈したい場合は特に注意を要します。

2 おひとり様にとって宗教法人に不動産を遺贈する場合のNG例

例えば、「私の不動産を宗教法人〇〇寺に遺贈」する場合は、どうでしょう。

確かに、法律上は、

当該宗教法人は当該不動産を所有することができるし、

当該不動産を売却してお金に換金して金銭的な利益を受けることが出来ます。

しかし、一部の宗教法人には、

宗教の目的以外で不動産を所有、また、

それをお金に換えて財産的な利益を受けることを

良しとしない宗教上の教えがある場合があります。

となると、当該遺贈を受けた宗教法人は

宗教上の教えに基づき、当該遺贈を辞退することになります。

(法律上、遺贈の放棄といいます)

そうすると、当該遺贈の意思表示をしたおひとり様が

法律上のおひとり様であれば、

当該不動産は国のものになってしまうし、

日常的なおひとり様であれば、

疎遠な相続人、いわゆる「笑う相続人」が

当該不動産を相続することになってしまいます(前々回コラム参照)。

3 宗教法人に不動産を遺贈するには清算型遺贈をするのが最適

(1)不動産の清算型遺贈とは 

遺言で「不動産を売却してお金に換えた上で、〇〇に遺贈する」という内容です。

大体は、

遺言執行者が不動産の売主となって、第三者に売却し、

全ての経費を差し引いて、

遺贈を受ける人(受遺者と言います)にその残ったお金を引き渡すことになります。

(2)今回のケースではどうすればいいのか

なので、今回のケースであれば、

という内容であれば大丈夫ということになります。

要するに、宗教上の教えで不動産の所有をすることは出来ないけど、

それがお金に替わって「お布施として」(これが重要!)頂けるのであれば、

宗教上の教えに背かないということになるので、

清算型遺贈がベストな方法ということになります。

4 教訓

遺言の作成は年配の人が多く、

お金の面も大事であるが、

今までの人生を通じての遺言者の生き様や意思の実現という

お金以外の側面も重要になってきます。

そういったお金の超えた部分に向けて、

親身に寄り添ってもらえる専門家であれば、

安心して遺言の作成を任せることができるのではないでしょうか。

これは知っておいて欲しい記事です。是非お読みください。