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家族信託成年後見
成年後見制度が変わると、家族信託はいらなくなるのか? その1
1 成年後見制度が大きく変わります
認知症などによって判断能力が低下した方の自宅を売却する場合、
現在の制度では成年後見人を選任し、
居住用不動産については家庭裁判所の許可を得る必要があります。
また、現在の成年後見制度には、
「一度利用を開始すると、本人の判断能力が回復しない限り、
原則として利用をやめることができない」
という特徴があります。
そのため、
成年後見人等への報酬が長期間発生することを
負担に感じる方も少なくありません。
ところが、令和8年6月、
成年後見制度の抜本的な見直しを盛り込んだ改正法が
成立・公布されました。
施行は公布から2年6月以内とされています。
2 「必要な期間だけ」利用できる制度へ
改正後の制度では、
現在の後見・保佐の仕組みを見直し、
本人に必要な範囲で支援を行うことが基本となります。
さらに重要なのが、
本人の判断能力が回復していない場合であっても、
家庭裁判所が「制度を利用する必要がなくなった」と認めれば、
制度を終了できる仕組みが設けられることです。
例えば、
自宅を売却するために成年後見制度を利用し、
売却手続が終了した後、
もはや制度を利用する必要がないと認められれば、
制度を終了するという選択肢が生まれます。
これは、現在の成年後見制度が抱えていた大きな問題の一つを改善するものといえるでしょう。
3 それなら家族信託は不要?
ここで疑問が生じます。
「自宅を売却するときだけ
成年後見制度を利用できるのであれば、
認知症対策として家族信託を利用する必要は
なくなるのではないか?」
確かに、
「認知症になった後に自宅を売却する」
という一点だけを考えれば、
改正後の成年後見制度は、
現在より利用しやすくなる可能性があります。
しかし、私は、
それだけで家族信託が不要になるとは考えていません。
なぜなら、
成年後見制度と家族信託では、,
そもそもの目的と利用するタイミングが違うからです。
成年後見制度は、
判断能力が低下した「後」に、
本人を保護するための制度です。
一方、家族信託は、
本人が元気で判断能力を有している「今」の段階で、
将来の財産管理について自分自身で設計しておく仕組みです。
4 「そのとき」ではなく「今」決めておく
例えば、父親が所有する自宅について、
「将来、認知症になった場合には、長男に管理や売却を任せたい」
と考えているとします。
家族信託であれば、
父親が元気なうちに、長男を受託者として指定し、
どのような場合に売却するのか、
売却代金をどのように管理するのかなどを、
あらかじめ決めておくことができます。
つまり家族信託の本質は、
単に「成年後見制度を使わずに自宅を売却する」ということではありません。
自分の判断能力が低下した後の財産管理を、
自分自身が元気なうちに設計しておくこと。
ここに家族信託の大きな意味があります。
確かに、
成年後見制度の改正によって、その選択肢は確実に広がり、
一般国民にとって非常に使い勝手が良くなることは間違いないでしょう。
とはいえ、
「自分の財産を将来どう管理してもらいたいのか」
を元気なうちに考えておくことは、
成年後見制度が非常に使い勝手が良くなったとしても、
重要であることに変わりはありません。
次回は、
成年後見制度が使いやすくなったとしても、
なお家族信託を利用するメリットについて、
「遺言としての機能」と「受益者連続型信託」という観点から考えてみます。